月に照らされて、教会のステンドグラスから明るい色がこぼれ出る。
この光はキラキラ輝いて、スザクとを祝福してくれているようだった。

ゼロとの最終決戦を前に、スザクとはアヴァロン内にある教会にいた。
時間は真夜中。
スザクは白い騎士服を着て、は淡いピンクのドレスを着ている。
ただ、いつも着るドレスとは違い、薄いベールが顔にかかっていた。
二人して手をつないでここにいる。

、心の準備はできた?」

スザクが優しく問えば、隣にいるは、花のように笑った。

「私はこの指輪をもらったときから、ずっと準備していたの。」

そう答えて、手のひらに乗る、ブルーブラックのガラス玉がはまった指輪を彼に見せる。
微笑んでスザクがそれを手に取った。
彼は深く息を吐くと、の前にひざまづく。
前に、に指輪を渡した、その時のように。
そのまま、言葉を口にする。

。枢木スザクは生涯君を愛し、ここに夫となることを誓います。」

スッと彼はの手をとり、彼女から受け取った指輪を薬指にすべらせた。
内側には『suzaku』の名前が彫られている。
は彼を見て、嬉しそうに笑った。
指輪を渡し終えたスザクは立ち上がり、彼女を翡翠の瞳に映す。
今度はが、そんな彼の手をとって、スザクと同じように言葉を紡いだ。

「枢木スザク、私は"枢木"となり、あなたの妻として一生愛し続けることをここに誓います。」

そして持っている指輪をスザクの薬指へとはめた。
こっそりスザクのために買っていた指輪。今度はからスザクへの。
その指輪は、彼の瞳と同じ、翡翠色のガラス玉がはまった指輪だった。もちろん内側に、の名前が彫ってある。
スザクが「え?」というような顔をすると、がいたずらっぽく笑った。

「私の気持ち。私が選んだの。」

そう言って、手を握る。
スザクは照れくさくなって、顔をほんのり赤く染めた。

本当はまだ結婚なんてできないし、正式に夫婦と認められたわけじゃない。
だけどこの先、何があるか分からないから、形だけの結婚式だけでも行いたかった。
のウェディングドレスは、セシルが気をきかせて持ってきたもの。
ロイドもセシルも、この形だけの結婚式を望み、にこやかに首を立てにふっていた。

色とりどりの光の中で、翡翠色のガラス玉を光らせながら、
スザクがゆっくりと彼女のベールを持ち上げる。
薄く化粧をほどこしたの顔。まるで女神のようだった。
涙を瞳にたくさん溜めて、彼女は愛する人の名前を呼ぶ。
そのまま静かに目を閉じた。

スザクも目を細め、赤く染まる彼女のふっくらとした唇に、自らの唇を近づける。

熱い吐息を交し合う。

二人で愛を誓い、確かめ合う。

長い長いスザクとのキス。

唇が離れてから、スザクの腕がの腰に回される。
は彼の体に自分の体をあずけた。

優しい抱擁。

たくさんの、触れるだけのキスが降り注ぐ。

彼女がスザクの頬に手を伸ばした時、彼が口元をほころばせて、幸せをかみしめるように呟いた。

、愛する僕の妻。僕は君が、世界で一番大事だよ。」

その言葉にもスザクに言葉を返す。

「スザク、愛する私の夫。私もあなたがこの世で一番大切よ。」

スザクとは、にっこりと笑いあって、再びキスを交わした。
その瞬間、天に浮かぶ月が、星が、この世界全てのものが彼らを祝福し、優しい光を降り注ぐ。
いつまでも幸せに暮らせるように。
二人がずっとずっとお互いを愛し合えるように…………。









祝福されし者たちへ

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