こんなに名前を呼んで、いとしいと思いお前にキスを捧げる。
それでもまだ、心のどこかでは足りなくて、俺はまた、お前の名前を呼ぶ。
ぎゅっと抱きしめて、お前の頬や瞼にキスを注げば、
お前は嬉しそうに笑って「ルルーシュ」と俺の名を呼ぶ。
いとしい………いとしい……本当に、愛してる、………。
でも今は――――――――

俺の愛したは病院のベッドの上にいる。
細いチューブにつながれて、はただ眠っているだけのように見える。
そう………眠っているだけだ、きっと。

3ヶ月前、は事故にあった。
車にひかれそうになった子供を助けようとして、自分が身代わりとなった。
まったく、らしいと今では思えるが、その時の俺は子供をすごく恨んだ。
俺のを早く返せと、何度心の中で叫んだことか………。

俺はいつものようにイスに座り、制服のボタンをゆるめる。
持ってきた花を花びんに刺し、の顔にふれた。
毎日、毎日、俺は欠かさずの病室を訪れては学校の話をする。

には親がいない。親戚も。
彼女はアッシュフォード系列の孤児院で育った。ずっと一人だった。
だから俺は、が元気だった時に言ったのだ。
将来俺は、お前の家族になるつもりだ、と。
その時は驚いた顔をしたけれど、彼女はにっこり笑って嬉しいと俺に飛びついた。
そんなことを考えて、学校のことをしゃべる口が止まる。
シンと、病室が静まり返った。
むなしくピッピッと機械音が響く中、俺のかすかな泣き声だけがする。

「なぁ、俺は約束しただろう?お前の家族になるって。
お前はそんな約束、忘れたとでも言うつもりか?
もし忘れてないなら…………目を開けろよ!!!」

もしも神がいるのだったら、俺の願いを聞いてほしい。
を………俺に返してくれっ!!!
俺はの体にすがりついて泣く。涙が零れ落ち、彼女の頬にポタリと伝わった。

…………っ!!!」

ありったけの声で名前を呼んだ。

「ルル………シュ…………」

かすれた声が返ってくる。ハッとして、俺は顔を上げた。
うっすらと目をあけた彼女が、俺を見たときにかすかに笑った。

………?」

彼女の名前をもう一度呼ぶと、今度ははっきり聞こえるように彼女は俺の名前を紡いだ。

「ルルーシュ、おはよう………。」

彼女の微笑みは、今までで一番綺麗な微笑みだった。





ねぇ私、夢を見たの。






「ルルーシュが、私の家族になる夢。ルルーシュと結婚する夢を………。」