ユフィを愛していた。でも僕は、ユフィを救えなかった。 だから僕は、愛を拒んだはずだったのに……。 人間とは不思議なものだね。どんなに拒んでも、また恋をしてしまう。 僕は今度、人間じゃないものを愛した。 サイボーグの女の子。名前を。彼女は絶対に死なないのだ。 人を愛さなくなった僕を見て、ユフィがこう言っているような気がした。 「他のものを愛することで、愛を償え。」と。 を愛してしまった日から、僕はため息ばかりだ。 彼女には、「愛」というものが理解できない。 が理解しているのは言葉の意味だけ。 愛そのものを理解していないのだ。仕方ない。はサイボーグ。 ロボットが人を愛するなんて考えられない。でも僕は、ロボットを愛してしまったんだ。 が振り返るたび、僕を見つめるたび、ドキンと心臓が大きくはね上がる。 プログラムされてできたクセさえ、僕の心をかきみだす。 こんなにも好きなのに、僕の心は届かない。ため息ばっかりが出るんだ。 あぁ、君の為の溜め息なんて、もうないよ……なんて思えたらいいのに。 僕はまた、溜め息をついた。 戦争が続いている。 本国は静かなものの、EU連合のほうではひどいらしい。 そんな地に、は派遣されている。彼女はブリタニアの最強戦士なのだから、戦場に行くのは当たり前。 が本国を離れて1週間。 早く会いたい。そう願っていると、EU連合の戦場から緊急の飛行機が飛んできた。 乗っていたのは……。 ただし彼女は目を開けていなかった。EU連合との戦いで全身を激しく損傷したらしい……。 電源の入っていないただの人形。最後に僕が会った時よりも全身ボロボロで傷だらけ。 けど不思議と傷が多いほど、が神秘的に見えた。 傷だらけで眠る君はまるで戦乙女。傷の分だけ美しい君。 僕はそっと君に触れる。作り物の血が、僕の手についたけど、嫌じゃなかった。 「あれは作りものだぜ」と、ジノはを見つめて笑った。 彼は僕の肩を引き寄せて軽く言う。 「スザクに似合う生身の女ならたくさんいる」と。そうかもしれない。 けど僕には生きてるとか、サイボーグだとか関係ないんだ。 僕は自体を愛してる。の心、の魂、の姿。全部が好きだ。 例え作られた魂でも、作られた器でも、僕はだから愛した。と同じような存在なんていない。 そうジノに言ったら、彼は瞳を伏せて呟いた。 「でもお前の魂の入れ物は、永遠には生きれない」と。 そんなの分かってる。いつか僕にはと別れる日がやってくる。 それは僕の体が死んで、魂が再び生まれ変わる時。その時僕は後悔しないはずだ。 を愛せた瞬間は、僕にとって輝くような瞬間だったから。 そして、生まれ変わった僕の魂はまた、別の入れ物に入ってを愛せたらいい。 そう願いながら僕は、目の前を歩いていくを見つめた。 配布元:honey bunch |