「突然だか、あみだクジで当たりが出たやつは、のチョコがもらえるゲームを始める。」

そんなことを突然言い出したリーダー・に、チームメンバー全員が驚いて声をあげた。
このリーダー、自分の彼女であるに関しては、嫉妬深く陰湿になることで有名だ。
その被害を一番に受けているのは、彼のクラスメイトである花村陽介。
陽介はとっさに身構えて彼に尋ねる。

「お、おい。そりゃどーいうことだよ?
普段のお前は絶っっっっっっ対そんなこと言わないだろ?」

の綺麗な瞳が陽介を捕らえる。
にこりと笑った彼は、なんだか迫力満点で、逆に怖く感じられた。

「いや、なんとなくの思いつき?
まぁたまにはこういうゲームも面白いだろ?」

全っっっ然面白くない!!……と心の中で叫んだのは、ほぼ全員だっただろう。
これはなんとしてでもリーダーに勝ってもらわなければ、のちのち精神的にきつくなる……。
きっと彼は負けた腹いせに、勝った人間を笑顔でいじめぬいていくだろうから……。

「マジでやんの……?」

「あぁ、マジだ。」

千枝の言葉にそう返した彼は、すでにあみだくじを作り始めていた。

、そんなことしなくても、私のチョコくらいみんなにあげるのに……。」

「いや、だって人間勝ち組負け組は必要だろ?」

ニヤリと口の端をあげたを見て、はかぶりをふった。
こういう仕種をした時の彼は、絶対に止められないとは知っているから。

(みんな、うちの彼氏が迷惑かけてごめんねっ。)

こっそりメンバーにアイコンタクトをとると、彼らは強張った表情で頷く。
仕方ない、これはの性格の問題で、は何も悪くはないのだ。

「よし、クジが完成したぞ。
みんなそれぞれ線を1本ずつ足していってくれ。」

リーダーが紙をテーブルの上に置く。
みんながそれぞれ1本ずつ線を足し、終ったところでじゃんけんをした。
もちろん、誰が先にどの線を選ぶかの……。
最初にリーダーであるが勝った。
線の上部分に書き込まれていく名前たち。
最後の一本に完二の名前が書き込まれた時、運命の赤ペンが登場する。
さぁ、メンバーたちに待っているものは、天国か地獄か……。
赤ペンが当たりを印した名前を囲む。

「で、で、誰になったんっすか?」

完二が身を乗り出して紙を覗きこむ。

って……先輩があたったんすか!!」

「さ、さすがだな!!」

「いやぁ〜……恋のパワーってすごいね!!」

陽介や千枝が、安堵の笑みを浮かべる。
これでしばらくは平和に過ごせる。
そんな彼らを見ながら、は誰にも聞こえない程度の声で呟いた。

「当然だ。俺は今、運がマックスのハイピクシーをつけてるからな。
まさか俺が、大切なのチョコを、本気でお前らに渡すと思ったのか?
そんなわけがない。全ては計算の上……だ。」

にやりと笑い、ズボンに手をつっこむ。

「ま、お前らのビクビクしてる顔が見れて、面白かったな」というセリフは、誰にも届かなかった。







恐怖のあみだくじ〜当たりは彼女のチョコレート〜