*ロスカラの強化人間設定を用いて……(笑) ブリタニア一等兵たちに訓練をつけてほしいと頼まれたナイト・オブ・セブンの枢木スザクは、 スリーのジノ・ヴァインベルグと一緒に訓練場へと来ていた。 訓練場にはいくつかの部隊が格闘、実践などの訓練をおこなっている。 もちろんナイトメアではなく、肉弾戦の……。 (僕も、ここから始まったんだ……。) 最近のことなのに、ずいぶん昔に思えてくる。 あの日、一等兵として作戦に参加して、ルルーシュに会って、ロイドさんからランスロットをもらった……。 それまではここで、僕も訓練を受けていたんだ……。 スザクがぼうっと過去を振り返っていると、ジノの楽しげな声が上がった。 「うーん、久しぶりだなぁこの雰囲気!!!やっぱ血がうずく!!!」 「ジノ、僕たちは遊びに来たわけじゃないんだよ? 一等兵に訓練をつけにきたんだか………」 そう言いかけたところで、近くから銃声が上がった。 二人がびっくりしていると、そばにいた上官が厳しい表情を崩さずに言う。 「心配ありません。ただの訓練です。 今、我が部隊は2人1チームで実践に近い接近戦をしているんです。 あの銃はペイント弾。色をつけられたら、そのチームは終わりです。」 ジノとスザクが上官から視線を外す。 すぐに上官から一等兵たちに厳しい言葉が飛んだ。 「お前たちしっかりしろ!!!またとライのチームに負ける気かっ!? 2人にはちゃんと条件をかしてるんだぞ!!!それでも負ける気かっ!?」 上官の声を聞き、すぐに数チームが戦う1人へと走って行った。 「なんだ。アイツらまだ一等兵クラスにいんのか。」 訓練場に視線を向けたまま、ジノが呟く。 「ジノの知り合いがいるの?」 「ん?まぁーな。唯一この俺に勝ったやつらがな。」 「君に……勝った?」 スザクが大きく目を開いた。 それと同時に、また銃声の音がする。 見れば訓練場に立つ長い髪の少女が銃を構えていた。 彼女は銃をおろすとすぐさま走った。 自分が複数の一等兵に狙われていると分かったから。 走るスピードは早く、ペイント弾が当たらない。 彼女はそのまま助走をつけて、一気に一等兵を飛び越えた。 飛んだ瞬間、一人の一等兵の肩を踏み台代わりにし、そのままくるっと一回転してペイント弾を撃つ。 逆さまの状態なのに見事、ペイント弾はヒットした。 彼らの胸に、べっとりとオレンジ色がついた。 地面に降り立った少女は髪をなびかせ、大きな青い瞳で倒した兵士を見ている。 その横顔も青い瞳も綺麗で、スザクは少女に見とれてしまった。 「なんだ?スザク。彼女が気になるのか? あいつはここじゃ、アテナって呼ばれてるよ。」 「アテナ……?」 ジノがそう言った瞬間、上官の声が響いた。 「実践終了まで、あと10秒!!!」 少女の瞳が持ち上がる。彼女はすぐに銃を構えた。 彼女の視線の先に、シルバーの髪を持つ少年と一等兵が肉弾戦をおこなっていた。 少年が相手を押さえつけた時、彼は名前を叫ぶ。 「っっっ!!!」 銃を構えた少女が引き金をひく。スザクは眉をひそめた。 いくら何でも銃を撃つには遠すぎる位置だ。あれじゃ当たるわけがない。 「遠すぎる………。」 思わず彼は呟いていた。しかし隣にいるジノは笑う。 「さぁ、どうかな?」 スザクが不思議そうな顔をした瞬間、上官が終了を知らせた。 シルバーの髪の少年に捕えられている一等兵は、無言でじっと自分の一部を見る。 真ん中にオレンジ色のペイント弾が張りついていた。 上官は声をあげる。訓練場には服に色をつけた一等兵ばかり。 その中で唯一、少女と少年は残った。 「ありえない……よ、こんなの。 あの距離から兵士の胸のど真ん中にペイント弾を撃ち込むなんて。 それに、1部隊がたった2人によって全滅……?」 ぶつぶつと呟くスザクを見て、ジノがため息混じりに言葉を返す。 彼の言葉に、翡翠の瞳もジノへと走る。 「まぁ、アイツらは普通の人間じゃないんだ。」 「えっ……?」 突然すぎる彼の言葉に、スザクは疑問と驚きが入り交じる声を上げた。 普通の人間じゃない? どういうこと? 綺麗に整列して上官の話を聞く彼女たちに視線を向ける。 真剣な表情をする少年少女は、どう見ても普通の人間だった。 ジノの言ったことが分からない。 「……なーんて言っても、説得力ないよな。 あのなスザク、アイツらはブリタニアが生み出した強化人間なんだよ。」 「強化、人間……?」 こくりとジノが頷いた。 「強化人間っていうのは、筋肉を故意に破壊して、さらに強い筋肉を作り出すんだ。 ナイトメアの技術も戦術も、学習速度も自然と身につけるんじゃない。 無理矢理頭に叩き込むらしい。 そうして生まれたのが、ブリタニアの最強戦士、強化人間。 彼らは普通の人間より全てが勝っていて、怪我や病気もしにくい。 ブリタニア軍には理想の人間……。」 風がふき、訓練場の砂が少しだけ舞い上がる。 ジノの言葉が遠く聞こえた。 強化人間。 あんな綺麗な女の子が、ブリタニアによって手を加えられてたなんてことが、スザクには信じられなかった。 |