陽介がバイクを買うために、バイト代を貯金しているのは知っていた。
それまではいつも、陽介の自転車の後ろに乗っていた。
陽介の自転車はボロボロで、何回も自転車屋さんにお世話になったシロモノ。
こっちに転校してくる前から使っている自転車で、色は黄色。
「陽介っぽい色だね」なんて言ったら、陽介は笑っていた。

そんな思い出の自転車が、陽介の家に置き去りにされた日。
陽介は私を連れて、バイク屋さんに行った。
ついに陽介が、バイクを買う日が来たのだ。
たくさんのバイクを前にして、私は彼に尋ねた。

「ねえ、どうして私を一緒に連れてきたの?」

彼は並んでいるバイクに触れながら、さも当たり前のように答える。

「だって、今度からこのバイクの後ろにを乗せて走るんだからさ、
やっぱ色とかデザインとか、一緒に決めたいだろ?」

そう言って、ニカっと笑う陽介がすごくまぶしい。
どうしてあなたはそんなに優しいんだろう?
でも私は、そんな優しいあなたに惚れたんだ。
陽介の横に並んだ私は、一言彼に伝えた。

「ありがとう。」

とっても短い言葉だったけれど、彼には気持ちが十分伝わったみたいで。
顔を赤くした彼が照れ隠しに、「………で、。色は何色がいいんだ?」と尋ねる。
私はすぐに答えた。

「黄色がいいな。」

あの思い出の自転車と同じ色。これからは黄色いバイクが私たちの思い出となるように。
陽介は私の手をとって、「やっぱりな」と呟いた。




君のバイクのうしろに乗って





これからも一緒に、素敵な思い出が作れればいいなと願う。
原付バイクの二人乗りは、ホントはいけないことなんだけどね。