テレビの世界の中で、この世界を揺るがすほどのことが起きていた。
背の高い少年が、ギロリと鋭い目付きで目の前の少女を見据えていた。
背後にはもう一人の彼を控えさせている。
対する少女も同じように、もう一人の自分を出現させ、少年を睨んでいた。

、今陽介とイチャイチャしてただろ?」

少年………の低い声がこだまする。
声に反応するかのように、ピクリとイザナギが動いた。

『イザナミ、わが妻よ。夫の前でジライヤごときと逢瀬を重ねるか……。』

控えていたイザナギもそう付け加える。
今度はと呼ばれた美しい少女が口をとがらせて言った。

「どうしてそうなるのよ!?
私はただ、花村君とおしゃべりしてただけじゃない!!!」

そう言う彼女の背後で、イザナミもまた、イザナギに対して口を開いた。

「我が愛しき夫よ。なぜそうなりますの?
わたくしはただ、ジライヤ殿と古き昔の話をしていただけ……。」

そのまま悲しそうに目を伏せた。
この光景を、数人の男女とクマ1匹が見ている。
みんな無言であったが、ショートカットの少女がため息をついた。

「どーすんのよ花村。だから言ったじゃん!!!
あんまり君の前で、を独占しないほうがいいって……。」

「や、俺と少し話してただけだって!!!
なんでこうなんのか、俺にもよく分からな……」

「ヨウスケェ〜、センセイはタ・イ・ヘ・ン、独占欲が強くて嫉妬深いクマよ。」

「なっ……!!!そりゃ人間として歪んでると思うわ俺っ!!!」

「……君とちゃん、イザナギとイザナミの夫婦喧嘩。結構見物ね……。」

そこで雪子がニヤリと面白そうに笑う。千枝はそんな彼女を見て、苦笑した。
視線を戻せばピリピリと空気に電気を走らせるイザナギと
彼らの属性はジオ系。対するはひのこを空気に舞わせている。
つまりはアギ系で……。
ハラハラと千枝たちが見守る中、言葉を発したのはのほう。

「だいたいは誰にでも笑顔を向けすぎだ。
それだから男はみんな、が自分に気があると思って話かけてくるんだ。
ちょっとはそういうことも理解しろ。」

『イザナミよ。我、妻はイザナミのみと決めておる。
それなのに我の気持ちも知らず、ジライヤと談笑するか……。我、許すまじ。』

彼の言葉には少しだけ悲しそうな顔をすると、いつもより大きな声で言葉を告げる。

だって、クラスの女の子たちみんなに優しくしてるじゃない……!!!
ひっ、人のこと言う前に、自分のこともよーく考えてよ!!!」

『それならば何故、あなたはわたくしが振り向かないでと言った時、
振り向いてしまったのですか?イザナギ……。』

の背後にいるイザナミが、イザナギをじっと見つめた。
どこか悲しそうで、その中には微かに怒りの表情もある。
しばらくはお互い睨みあっていたが、不意にぽつりと彼女のほうが言葉を漏らした。

「でもね……私はそんな優しいが好き……だよ。」

『けれどもイザナギ、
わたくしを追いかけてきてくれて、わたくしは嬉しかったのです……。』

とイザナギが大きく目を開く。
そのまま彼は走り出し、目の前の彼女を固く自分の腕に抱いた。
に合わせるように、イザナギとイザナミの姿も2つに重なった。
突然のことでは、の腕の中で目を瞬かせている。

「……俺だって……いつでも笑顔なが好きだ。
話しかけると太陽みたいに輝くような笑顔をくれる……。
こんな可愛い子が、俺の彼女なんだって思うと、嬉しかった。
でもやっぱり……お前を誰にも渡したくないんだ!!!だから……!!!」

ぎゅっと抱く腕に力が込められる。
……」とが囁き、そのあと彼の胸に顔を埋めて呟いた。

「……その、ごめんなさい。私、と喧嘩なんてしたくないよ。
だってのことが……大好きだから。」

彼女がの背中に手を回す。その瞬間、も謝った。

……俺も……ごめん。」

そのままおでことおでこがくっつけられる。
二人の吐息が混じり合い、の顔に笑顔が現れた。
「やっぱ喧嘩は嫌だな」と、は静かに笑った。
さっきまで喧嘩していたイザナギとイザナミも仲直りしたらしく、二人で肩を寄せあっていた。
そしてやがて消えていく。彼らはそれぞれの場所に戻った。
イザナギはの中へ、イザナミはの中へ……。

「なーんだ。結局こういうオチか。」

呆れたように千枝が言う。
花村が冷や汗を拭きながら呟いた。

「喧嘩するほど仲がいい……ってか?」

「ふぅーん、つまんない……。」

口を尖らせてそう言う雪子に、千枝と陽介は苦笑しかできなかった。
目の前では、しっかりと二人の愛を確かめあっているカップル。
こりゃ少し時間かかるなぁーと、その場の誰もがそう思った。






夫婦喧嘩






「ところで陽介。」

「なんだよ。今敵と戦ってんだからさ、あとにしてくんね?」

「いや、俺の思考がたった今、と喧嘩したのは陽介のせいだって結論づけたんだ。」

「は?どういうこ……」

「よって、その敵もろとも陽介、お前も死んでくれ。」

「………はぁっ!?」

振り返った陽介の前に、魔性の笑みを携えると、電撃を走らせるイザナギがいるのだった……。

(悪いことは全部俺のせいかよっ!?)









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いつもいつも運が悪い花村陽介(笑)
いや、運が悪いっていうより、男主人公の不満を受けるタイプだと思う。
とにかく4万hitありがとうございましたー!!!