反命 の ロロ #03










お弁当を食べ終わり、しばらくゆっくり過ごしてから、・ロロの3人は町へと引き上げた。
自然の恵みに触れたからか、の表情は落ち着いていた。

少なくとも、今朝の沈みようは見られなくて、ロロはほっと一人で息を吐く。
並んで町を歩いていると、いつしかの周りには人が集まってきた。
そこにずいっと体格のいい男……ベンがに話しかける。
ベンはこの街のリーダー的存在で、と一緒に作物を作っている中年の男だった。

、いい果物が収穫できたんだよ!!!旬モノだぜ。ちょっと見ていきなよ!!!」

「え?そうなんですか?」

が驚いたように言葉を返すと、今度はひょろっと細長い男性が気さくにに声をかけた。

「この際だから、うちの総督さんにも見てもらおう!!!
あんたの治める土地で実をつけたもんだしな!!!」

「そう言われると、ぜひとも見なければなりませんね。」

は笑って答えた。そのあと、視線をロロに向ける。
その行為にベンが気付いた声を上げたあと、ロロの肩に太い腕を回して大きく笑った。

「なんだ。ロロもいたのか!!!お前も来るといい!!!
お前さん、ひょろっとしてるからウチの果物、たくさん分けてやるぞー?」

ぐしゃぐしゃっと彼の頭を撫でていく。
ロロは弱々しく「痛いよ……」と片目をつぶった。けれども顔は笑っている。
ロロはベンが自分を可愛がってくれていることを知っていたから。彼だけじゃない。
この町の人は、ロロを自分の息子や弟、お兄ちゃんみたいに思ってくれている。
みんな暖かい人たち。日だまりの心を持った……。

「ロロ、せっかくだから一緒に行くか?
この兄さんが愛情こめて育てた果物を見せてあげるぞー?」

にやりとが笑った。そこにの一言が混じる。

「それじゃあ見せてもらおうかしら。
もちろん、騎士服を泥だらけにした分の成果はあるのよね?」

そこで集まっていた街の人たちがどっと笑った。
ベンが、「は総督の尻に敷かれてんなぁ!!!」と豪快に笑って言う。
ロロも苦笑した表情を浮かべた。
彼はに視線を移して、ついていくことを伝えようとした。

「姉さん、僕も一緒に………」

「ロロ様!!!ロロ様はこちらにおられますかっ!?」

ロロの声と彼の名を呼ぶ声が重なり、すぐさまその場がシンと静まりかえる。
馬のいななきが聞こえ、その馬に乗っているのが城からの遣いだと分かると、すぐさまが声を上げた。

「ロロはこちらにいますよ。どうしたのですか?」

彼女の声に反応した遣いが、馬を降りてのところへやって来る。

「おぉ!!!こちらにおられましたか!!!実はブリタニア本国から、ロロ様宛の急ぎの手紙が届いております。」

「え?僕に……?わざわざ本国から……?」

ロロが不思議そうな顔をする。
そばにいたがその手紙のことを尋ねるが、遣いは詳しく知らないようだった。

「ありがとう。僕急いで帰って確認してみる。」

「それなら、この馬をお使いください。
ロロ様が乗ると思い、あなた様の馬を一緒に連れてきました。」

遣いが後ろにいた馬をロロに差し出す。
馬のつぶらな瞳がロロを見た瞬間、その馬は彼に顔をこすりつけた。
すなわち、ロロが大切にしている馬。
すぐさま彼はひらりと馬にまたがった。すまなそうな目をベンたちに向けるロロ。

「あの、ベンさん、今日はごめんなさい。
また今度、果物見せてくださいね。楽しみにしときますから。」

「いいってことよ!!!ロロ、気をつけて帰れよ。」

「ベンさんの言う通り、気をつけてね。」

二人の言葉にロロは頷く。くるりと背を向けると、彼は馬を走らせた。
街の人たちが一斉に手を振った。すぐにロロの姿は小さくなっていく。

「ロロも大きくなったもんだな。
昔はぴーぴー泣いて、総督のそばを離れなかったよなぁ〜。」

懐かしいそうにベンが空を見上げた。
澄んだ空に白い雲がいくつか流れていく。彼の言葉にも同意した。

「そうですね。あんなに泣き虫だったロロが……。僕も信じられませんよ。」

そのままスッと瞳を細める。ロロの姿はもう見えなくなっていた。
そんなを見たあと、ベンは彼の背中を乱暴に叩き、笑い声を上げる。

「ま、ロロだけじゃなくお前らも成長したよ。
やんちゃなお姫様は、今では民衆をひっぱる総督だし、
昔一匹狼だった生意気なガキは、今では総督の立派な右腕だしな。
そして、二人とも皇帝直轄(ちょっかつ)のエンジェルズ・オブ・ロードときたもんだ。
俺も年をとったわけだ。さ、そろそろ果樹園に行くか!!!」

そう告げたベンを見て、は二人で顔を見合わせてクスリと笑った。








ロロは愛馬を走らせる。
城に着くまでの間、急ぎの手紙のことを考えていた。

ブリタニア本国から……。

頭の中でその言葉が妙にひっかかっていた。
気付けば彼は城へと着いていた。
するりと馬から降り、「ありがとう」と声をかけると、馬は勝手に自分の居場所へ戻っていく。
急ぎ足で城に入り手紙のことを尋ねると、すぐにメイドが手紙を持ってきた。

白い封筒。

表にロロの名前が書いてある。封筒を裏返した瞬間、体から血の気が引いた。

片隅に刻まれた機密情報局のマーク。

ここ数年、しばらく機情から仕事の依頼はなかった。
機情からロロに回ってくる仕事は、主に暗殺の仕事。
昔はギアス能力を使って暗殺を行っていたが、たちが日本を潰してからしばらくたって、
その仕事は引き受けないようにしたのだ。
兄と姉が戦争のことを悔やんでいる姿を見て、命を奪うということがどんなことなのか分かったから……。
もちろん機情はいい顔をしなかった。
でも機情はロロを離さない。ロロのギアス能力は、機情にとっても大きいものだから……。

(機情が……今さら僕に、何の……?)

口が渇いていく。呼吸と手が震えた。
ロロはゆっくりと封を開ける。中に入った紙を取りだし、恐る恐る文字列を追った。
そこに書かれた仕事内容は、暗殺の仕事ではなかった。

「かん、し……だって?暗殺じゃなくて?一体誰の……?」

そのまま手紙を読み進めていく。一番下に、監視対象の名前があった。

「ルルーシュ・ランペルージ……17歳?
姉さんや兄さんと同じ年齢だ。でも……なんで?」

ロロは首を傾げた。機情のターゲットになるのには若すぎる年齢だ。
詳しい情報は機情から直接連絡が来ることになっているようなので、ロロはそれを待つことにした。
引き受けるかどうかは詳しい情報を入手してから決めよう。
ロロはそう思いながら手紙を元に戻し、自分の部屋の戸棚にそれをしまい鍵をかけた。

ルルーシュ・ランペルージ。

その人物が、のちにロロと深く繋がる人物だとは今の彼には分からなかった。