教室についてから、俺とは呼吸を整えた。 テレビの中に突入した俺は、マヨナカアリーナの特別ルールにより、 今はとコンビを組んで対戦相手と戦っている。 もちろんメインで戦うのは俺だ。だって考えてもみてほしい。 自分の彼女を相手と戦わせて傷つけたくはない。 俺はをいつだって守ってやりたい。それが俺の役目だと思っている。 もちろんは、納得していないけれど………。 「、大丈夫?疲れたでしょ? 私が代わってもいいんだけど、は絶対だめっていうからこんなことしかできないけど。」 は苦笑して俺の体に手をかざす。の背後に、ゆっくりペルソナが浮かんだ。 彼女のペルソナはスセリヒメ。 とても美しく、暖かく優しいペルソナ。それが彼女の分身。 のかざした手から、暖かい光があふれ出す。 彼女はディアラハンで俺を全回復させてくれた。 この光の中に、の気持ちがつまっていると思うと嬉しい反面、申し訳なかった。 俺がこんなに傷ついて、をきっと、悲しませていると思うから。 「ありがとう、。お前のおかげで元気になったよ。」 「こんなことならいつでも………。」 はかわいらしく笑った。まったく、本当に忙しいゴールデンウィークだ。 本当ならジュネスでみんなとしゃべったり買い物したりする予定だったのに。 それからまた家族みんなととで夕食を囲み、夜は彼女とイチャイチャするはずが……! 俺の計画を狂わせた犯人め………。 「本当に、許さない………。」 彼女に聞こえないように、そっと小さくつぶやいた。 目の前のは、きょろきょろあたりを見回している。今回は教室へと誘導された。 陽介や天城、里中とはもう戦った。他に戦う相手がいるのだろうか? まさか………。俺は目の前の彼女を見る。 まさか、じゃないだろうな?いや、でも総統のクマは言った。 特別ルールで、俺とは二人で一組だと………。 考え込んでいるうちに、俺は総統クマの話を聞き逃していたようだ。 気づいたときには、目の前に白い煙が上がる。 人影が現れたとき、の小さく息をのむ音が聞こえた。 「………なん、で?なんで、アイギスが?」 が相手の姿を見てから、少しだけ後ずさる。 アイギスと呼ばれた機械の少女は、ぎこちなく彼女に笑いかけた。 「お久しぶりですね、さん。お元気そうでなによりです。 まさかこんな場所であなたに会うなんて………。 そして、こんな形であなたとは会いたくありませんでした。 実は私たち、ある作戦でこの場所を訪れた次第であります。」 「私たちって………まさか他にも?」 「はい。私のほかに、美鶴さんや真田さんが………。」 その二人の名前はから聞いたことがあった。確か、の前の学校の先輩……。 は信じられないというように目を大きく開き、アイギスを見ていた。 「作戦って………一体どういう………? アイギスが出るってことは、もしかしてシャドウがらみ?」 「シャドウからみというか………。 実は、対シャドウ兵器……つまり私の姉にあたる兵器が何者かに奪取されてしまいました。 本来は桐条グループの研究施設で、風花さんが厳重に管理していたのですが……。 姉の名前はラビリス。ラビリスは今、ここにいることをつきとめました。 私たちはそのラビリスを回収しに来たのであります。」 「そしてアイギスも、このマヨナカアリーナに巻き込まれたってことね。」 アイギスさんがうなずく。 巻き込まれた……ということは、次の俺の対戦相手は……。 アイギスさんの視線が、俺へと向く。 どうやら彼女も分かっているらしい。自分自身の対戦相手が誰であるかが。 「なるほど。彼がさんの………。」 アイギスさんの瞳が、俺へと突き刺さる。 頭のてっぺんからつまさきまで、じっと見つめられる。 機械の体をしているが、表情もしぐさも人間そのもので、なんと言うか恥ずかしい。 じっくり俺を観察したアイギスさんが少しだけ表情を和らげた。 「……あなたを見ていると、なんとなく彼を思い出します。」 それはあの『彼』のことを言っているのだろうか? 俺がを愛する前、彼女を愛した男。の代わりに楔になり、この世界を守っている男。 でももうは、彼のものじゃない。俺のものだ。 「俺は彼と同じ能力を持ってはいるが、彼ではないよ。」 「……ええ、分かっているであります。彼は彼。あなたはあなた。 本当はあなたとは戦いたくないでありますが、姉を回収するためには勝ち進まなければならない。 あなたに恨みはありませんが……全力で行かせてもらいます。」 アイギスさんが武器を構えた。俺だってこの戦いは譲れない。 なんとしてでも放送室に行き、菜々子を……。りせを助けなければ。 それはだって同じ思いのはずだ……。 「仲間同士で戦うなんて、あのときのようでありますね。」 「そうね。あの鍵を奪い合ったときのよう……。」 とアイギスが同時に苦笑した。間髪入れずにりせのアナウンスが入る。 戦いが………始まるっ!甲高いゴングが教室いっぱいに鳴り響いた。 |