「やっぱり今日もだ…………。」

スザクはロッカーを開けて中を確かめる。
いつもように綺麗に洗濯された体操服が置いてあった。
ラクガキは消されていて、とってもいい香りがする。
手に取れば、それはいつだってふわふわしていた。

ノートはいつも通り見やすくて、授業についていけてないスザクにとっては、
とてもありがたいものとなっている。
授業内容が一致していたから、同じクラスの人だろうかと思った。
この前彼はこのノートと同じ字の人をクラスでこっそり探したけれど、結局見つからなかった。

あの日のことがあってから、この出来事は一週間ずっと続いている。

一体誰なんだろう。

スザクは自分のクラスに行き、席についてロッカーの中に入っていたノートのコピーを見つめる。
本当に…………綺麗な字。ずっと見ていると、すいこまれてしまいそう。
彼はかすかに微笑んだ。

これを書いた人は、一体僕のことをどう思っているんだろう。

何を思ってこれを書いているのだろう。

最近スザクはそう考えるようになっていた。
そしてだんだん…………このノートの持ち主に惹かれていく自分がいる。
これはおそらく女の子の字で、クラスメイトではない。
彼が持っているヒントはこれだけで、人物を特定するにはあまりにも情報が少なすぎる。
だけど、どうしても彼女が誰なのか知りたい。
せめて…………何か言葉を交わせないだろうか?
眉間にしわを寄せて考える。
その時、そばで話していた女子生徒たちの会話が耳に入ってきた。

「ねぇねぇ聞いて!!!今日ロッカーを開けたらラブレターが入ってたのよ!!!」

「えー本当っ!?相手は誰よぅっ!!!!」

「えへ、それはモチロン秘密に決まってるじゃないの。」

きゃあきゃあ言いながら彼女たちが去っていく。
何気なくこれを聞いていたスザクはハッとした。

(そうだ、手紙を書いて、自分のロッカーに置いておこう!!!
もしかしたら彼女が読んでくれるかもしれないっ!!!)

ガタガタと机の中をあさぐって、一枚のルーズリーフを引っ張り出す。
授業が始まってしまいそうだったが、スザクは気にもとめなかった。








は今日も、スザクのロッカーがイタズラされる瞬間を目にする。
辛そうな顔をして、今日もひどくやられているわと思う。
だけど彼らを止める勇気なんてやっぱりなくて…………。

人気がなくなったときに、はこっそり彼のロッカーを開けた。
いつもと同じように体操服にラクガキが施されている。
教科書とノートは無事で、それだけでも救いだとは胸をなでおろした。
ラクガキに汚れた体操服を手に取ると、パサリと何か紙が落ちた。

「……………何かしらこれ。」

床に落ちた紙を拾い上げる。
折りたたまれたルーズリーフにシャーペンで、『僕を助けてくれる人へ。』と書かれてあったので、
の心臓はドクンと大きく跳ね上がった。
紙を制服のポケットへ突っ込むと、いそいそとその場を離れ、屋上へと向かう。

夕方の屋上に人影はない。
なるべく目立たないところに腰をおろして、はさっきの紙をポケットから取り出して開いてみる。
さらりとした形の整った、けれども男の子の字で、丁寧に文が書かれていた。

『僕を助けてくれる人へ。

いつも体操服を洗ってくれてありがとう。
僕は君が洗ってくれた体操服を着るだけで、本当に幸せを感じるんだ。
こっそり僕を助けてくれる人がいるんだなぁって。
ノートも見やすくて、すごく助かっているよ。本当にありがとう。
でも…………僕は君に迷惑をかけたくない。
体操服にラクガキされるたび、君は洗ってくれるけど、君に対してとても悪い気持ちになる。
僕は大丈夫だから…………どうかもう、やめて欲しい。これは僕からのお願いです。
それから、君が一体誰なのか教えて欲しい。僕は君に会いたいんだ。
もしよければ返事をください。』

「枢木……………スザク。」

最後のほうに書かれた名前を声に出してみた。
彼が…………手紙をくれた。
それだけなのに心がほんわかするのはなぜだろう?
でも…………これらの行為をやめるわけにはいかない。スザク一人に辛い思いをさせるのは嫌だった。
かと言って、イジメを行う生徒に文句を言ってやれる勇気もない。
だから…………私のやることは、せめてもの彼への償い。
スザクからの手紙を綺麗にたたんで、再び制服のポケットにしまった。

「お返事、書こうかな。」

しばらくして、夕焼けに染まった空を見たままポツリとが呟く。
その声を聞く者は赤い色を浮かべた太陽と、流れる雲と、遠くへ飛んでいく数羽の鳥たちだけだった。












#2 君が誰か知りたくて











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眠いので文章が支離滅裂………(をぃ)おまけに短い。
ダメじゃんか皐乃柏ーっ!!!!