皇暦2017年。エリア11にゼロというカリスマ的存在が降臨した。 日本人――――――通称『イレブン』は、自分の国を取り戻さんがため、 ブリタニアを崩壊させようとしたゼロにつく。 彼らは『黒の騎士団』と名乗り、神聖ブリタニア帝国と対立した。 しかしその結果は、黒の騎士団の敗北。 ゼロの死亡ということで、その戦いは幕を下ろした。 あの事件から一年……………。 皇暦2018年。エリア11。 ブリタニア本国からやってきた二人の少年・少女により、 このエリア11はだいぶ復旧が完了した。 彼らはブリタニアでは『エンジェルズ・オブ・ロード』と呼ばれる存在。 皇帝直属の部隊でありながら、自分たちによる決定権や選択権を持つ。 皇帝以外の命令は、絶対的に拒否できる拒否権なんかも持ち合わせている、 少し特殊な部隊だった。 そして彼らはこのエリア11で、新しい名前が付けられた。 セラフィム。 それが新しい名前。 イレブンが彼らにつけた………。 彼らはどんな人であろうが、救いを求める人々には手を差し伸べた。 それこそ最初はイレブンも、ブリタニアからきた彼らを軽蔑したが、 それでも日本を復旧させようと作業する二人に、親近感を覚えていった。 「さまーっ!!!お花見つけたのっ!!!」 服を汚しながら街を復旧させる少女、・ルゥ・ブリタニアに、 幼い少女が白い花を渡した。 は立ち上がって、その花を受け取る。 とても甘い香りが漂っていた。 「まぁ、素敵なお花ね。なんていう花なんでしょう………」 「えっとね、おとーさんが『水仙』って言ってたよ。」 にっこりと少女が笑った。 「スイセン…………?気高い名前ですね。 そうだ、こうしてあげましょう。ちょっとこっちへおいで。」 は少女の目の高さまでしゃがむと、彼女の髪に水仙を刺す。 黒い髪に白い花はとても映えた。 服はボロボロでも、その存在が妖精を思わせる。 「花の妖精みたいね。お父様に見せていらっしゃい。 きっととっても似合うって言ってくれるわ。」 ぽん、と少女の頭に手をのせると、彼女は嬉しそうに笑って走っていった。 しばらくその少女の背中を見つめたあと、は別の場所へと視線を移す。 ある程度まで復旧したというものの、まだまだだった。 折れたコンクリートが折り重なり、今にも崩れてしまいそう。 イレブンはそういうところで生活していた。 8年前のあの事件がフラッシュバックする。 殺戮天使。 彼らは影で、そう呼ばれていた。 8年前、ブリタニアが日本に宣戦布告したとき、二人は日本人を虐殺した。 ただ単に、日本人が憎かったから………。 ルルーシュとナナリーを殺した日本人が。 実際二人は無事だが、彼女はそんなこと知らない。 日本人を虐殺して彼らの国を潰した時、それは過ちであり、犯してはならない罪だったことに気付く。 彼らは………決してぬぐえない罪を犯してしまったのだ。 「日本はどうなっていくんだろう。何も、変わらないのかな。 でも、日本の運命を変えたのはこの私。私のせいで日本の運命は変わってしまった。 もしもあの時、私に力があれば、運命は変わったかもしれないのに。」 は遥かかなたにそびえ立つ、高い高いタワーを見る。 バベルタワー。 その時だった。 一つの飛行船がバベルタワーの真上まできたと思うと、 それはタワーの上層部にケーブルを放つ。 は眉をひそめた。 周りで作業していた日本人も異変に気付き声をあげた。 「様っ!!!」 先ほどの小さい少女が泣きながらにしがみつく。 はその少女の頭を撫でたあと、近くにいるであろう人物に声をかけた。 「っ!!!バベルタワーがっ!!!どうなってるの!? なんだか様子がおかしいわ…………。」 「分からないっ。 、コレは僕のカンなんだけど………あれは黒の騎士団の生き残りなんじゃないかな。」 と呼ばれた銀の髪をもつ少年は、パソコンに向かったままそう言った。 エンジェルズ・オブ・ロードのもう一人のメンバー、・ルシフェル。 心優しく、常にとともに行動する少年だった。 時には優しく。時には強く。 は自分のコードを使ってバベルタワーの監視カメラに侵入すると、 映像をそのパソコンに映し出す。 「ひ、ひどい………!!!」 抱きついたままの少女の顔を胸に押し付け、画面を見ないようにさせると、 は小さく呟いた。 きらびやかな施設は廃墟と化している。 その中で未確認のナイトメアと軍のナイトメアの戦闘。 も自分の口を覆い隠す。 吐き気がしそうだった。 床に飛び散ったのは機械の残骸と、ガラスと、人間の赤い血。 しばらくして監視カメラに弾が当たったのか、映像は映らなくなった。 ザーッと波を立てるだけの画面を、二人はじっと見つめていた。 「ねぇ。私達はブリタニアとしてあそこに行くべき? それともエンジェルズ・オブ・ロードとして、ここにとどまるべき?」 がゆっくりと彼に聞いた。 はキーボードに指を乗せたまま、口を開いた。 「それを決めるのは僕達、エンジェルズ・オブ・ロード自身だ。」 リベラ・ミ。 主よ、かの恐るべき日に、永劫の死よりわれを解き放たせたまえ。 |