戦闘が始まった。 ギアス教団とは、ギアスを研究している機関である。武装集団ではない。 ゆえに、黒の騎士団による一方的な虐殺が始まった。 そんな中、はランスロット・クラブでルルーシュに付き従っていた。 聞こえるのは人々の悲鳴と、銃声音と爆発音。 見えるのは飛び散る血しぶきと次々に倒れる研究員たち。 「やめろ…………やめてくれ。」 忌々しいあの記憶が蘇る。 8年前の戦火。自分達が行った仕打ち。あれと……同じだ。 はランスロット・クラブの操縦レバーを握ったまま、大きく叫んだ。 「やめろよ!もう、いいだろっ!」 瞳が赤く染まる。そこに浮かぶのは、ギアスのマーク。 悲痛に叫んだの近くで、ナイトメアに乗ったルルーシュはただただ笑っていた。 (フフフフフ。V.V.を追い詰めた以上、あとはロロの機体に仕掛けた爆弾を作動させるだけ。 勝利への弔いとして、ロロの命を捧げてやる。償わせてやる!) そんな時だった。 壁を破って現れた機体に、ルルーシュとC.C.、ジェレミアが驚きの声を上げる。 オレンジ色の丸い機体………ジークフリート。 はその機体を見て、目を細めた。 まがまがしい感じがする。そしてそれは、彼が探していたもの。 その口から真実を………聞き出す。 「V.V.……………。」 小さく呟いたの言葉と同時に、みんな一斉にV.V.への攻撃を開始した。 しかしジークフリートの装甲は固く、さらにさまざまな攻撃を全て弾いてしまう。 V.V.がルルーシュの機体を追いかけ、C.C.が助けようとするも、ルルーシュはダメだと怒鳴った。 彼の狙いはC.C.であるのだから。 ルルーシュはここで共犯者を失うわけにはいかなかった。 ルルーシュの次に、ジェレミアが相手となる。 ジェレミアは仕える忠義はマリアンヌにあると語った。 その名前に、V.V.が反応し瞳を鋭くする。「お前まで、その名を口にするか」と。 「ロロ、なんとかV.V.にとりつけないか?」 「でも、V.V.相手じゃギアスは聞かないし………。」 「取り付くだけでいいんだ。あとの策はある。」 「うん、やってみるよ。」 ジェレミアがV.V.と戦っている頃、ルルーシュはロロにそう告げた。 兄思いのロロは、なんとかやってみようとジークフリートめがけてヴィンセントを動かした。 ルルーシュの言うあとの策とは、ジークフリートにヴィンセントが取り付いた瞬間、 ヴィンセントに仕掛けた爆弾を爆発させること。 ロロもろとも、V.V.を葬り去る………。 ルルーシュは起動装置をぎゅっとにぎりしめた。 ロロがV.V.の機体に攻撃を仕掛ける頃、一つの白い機体が、ヴィンセントの前に立ちはだかった。 「にい…………さん?」 驚いて、ロロはへ話しかけた。 画面に映る兄は、少しだけ笑っていた。その瞳には、ギアスのマーク。 「ロロ、僕は少し、V.V.に話があるんだ。だからお前の代わりに僕を行かせてほしい。」 「でも…………っ、ルルーシュが………」 「いいから僕を行かせてくれっ!」 普段優しい口調の兄が、鋭い瞳でそう叫んだ。 画面には、ロロの知らない兄の姿が映っている。ロロは息を飲んだ。 「兄さん……」と呟けば、小さく「ごめん。」と返ってきた。 そのまま、ランスロット・クラブがヴィンセントに背を向ける。 「ロロ、僕が死んだら………を頼む。」 そういい残した兄は、ジークフリートへと向かって行った。無線が切られる。 ロロは機体をその場にとどめ、コクピット内で小さく言った。 「兄さん、僕さっき言ったよね。兄さんのことは……僕が殺すんだって。 だから……簡単に死ぬとか言わないでよ!」 そのままヴィンセントは、ランスロット・クラブを追いかけた。 V.V.は向かってきたランスロット・クラブを見て不敵に笑う。 乗ってるのは………・ルシフェル。 ギアスを所持してはいるが、ギアス教団には入っていないイレギュラー。 そのギアスの力は誰よりも強く、いくつものギアスを所持している。 「まさか君が出てくるなんて思ってもみなかったよ、・ルシフェル。」 と対峙するV.V.。はためらわず口を開いた。 「ずっと………僕は過去の記憶なんてどうだっていいと思っていた。 どうしてエリア7の研究施設で、強化人間として実験されていたのか。 どうして僕は、ギアスを所持しているのか。 記憶を失う前の僕は、何をしていたのか。 過ぎたことを思い出しても、意味はないと思っていた。 でもそれはただの言い訳で、僕は本当のことを思い出すのが怖かっただけだったんだ。 けど、それじゃいけないって最近気付いたんだ。 過ちも全て、受け入れてこその僕。だから僕は、真実を知りに来た。」 「なるほど………。けど残念だね。君にギアスを与えたのは僕じゃない。 僕はただ、君を眠らせただけだよ?それは昔の君が望んだこと。 君はね………逃げ出したんだよ、過去の過ちから! それなのに、ルシフェルなんて名前をつけてもらちゃって………。」 ルシフェルには、『光を運ぶ者』という意味がある。 と出会ったとき、名前以外を覚えていなかった彼に、彼女が与えてくれた名前。 誰にでも、そうあってほしい………。 はその時言った。しかし今のには、その時の記憶がない。 全て………抜け落ちてるのだ。ギアスを使用した代償として支払った記憶だから。 「君が光を運ぶ者?笑っちゃうよ。君はね………災厄を運ぶ者だよ! 歴史にその名を刻むことが許されなかった人物!みんなを死に追いやった存在! お前は…………」 そこでランスロット・クラブの後ろから、ヴィンセントがジークフリートへと切りかかった。 「ロロ!」とが声を上げる。 ロロは怒っていた。目の前で、兄が否定されることに。 まるで兄が、悪者のような言い草。それが彼としては許せなかった。 新たなる登場人物に、再びV.V.が笑った。 「ロロ………。大切な兄さんを否定されて、ご立腹みたいだね。 僕にギアスは効かないって知ってるのに、わざわざ向かってくるなんて馬鹿だね。 ねぇロロ、君はね、失敗作だったんだよ? ギアスを使っている間、自分の心臓も止まってしまうなんて、 いつ死んでも可笑しくない欠陥品さ。」 ヴィンセントの足が、ジークフリートによって切り取られる。 それでもロロは諦めずジークフリートに取り付いた。 は焦りの声を上げて、ヴィンセントを回収しようとする。 けれども、ランスロット・クラブもジークフリートによる電撃攻撃を受けた。 二人の少年が、ナイトメアのコクピット内で声を上げる。 「………にい、さん……。」 「ロロ、お前は………欠陥品なんかじゃ………」 「兄さんだって………災厄を運ぶ者なんかじゃ………」 ランスロット・クラブとヴィンセントが手を取り合った時だった。 ジークフリートの弱点に攻撃を加える人物が一人。 その衝撃で、二つの機体はジークフリートから離れた。 ルルーシュが「チッ……」と舌打ちする。その瞳の先には、コーネリアがいた。 「V.V.と言ったか。この私を脆弱にして惰弱と侮ったな。」 今の攻撃で、ジークフリートの装甲が破損する。 ルルーシュとコーネリアがジークフリートに銃を向けた。 ヴィンセントとともにあったランスロット・クラブも、 ツインMVSを可変式アサルトフルに変え、ジークフリートに照準を合わせる。 「ユフィの仇。そこで滅せよ………。」 「ごめん、。僕は彼を殺す。だって彼は……」 「ギアスの………」 み な も と っ ! 3方向から攻撃を受けたジークフリートは、一瞬にして爆発した。 正義のためだ。正義のためだぞ、わが魂よ。 だが清浄の星々よ、お前たちにその罪の名を明かすまい。 正義のためなのだ。 (シェイクスピア) |