「思い出したか?・ルシフェル。お前の昔の記憶を・・・・。」

静かにそう言うC.C.に、は自嘲的に笑ってみせた。

「思い出したよ。僕は君と同じような存在であるU.U.と、
コードを半分分け合った存在だった・・・。僕はルルーシュと同じような力を得て、
兄や父を殺した。暴走したギアスによって、母や妻、妹までも・・・・。
アストリアを捨て、敵から逃げた僕は自分の子供であるロイを、
大事に育ててくれるであろう老夫婦に託し、U.U.と一緒にあの場所へ向かった・・・。
今の名前で、神根島とよばれる場所。僕はそこで――――――」

U.U.は僕に言ったんだ。
君を殺すことはできない。だけど、僕と君とがひとつになることで、
僕は君の願いを叶えられると。

。君は全てを忘れて、ゆっくり眠るといい。
子供に戻って、再び新しい人生を歩むといい。
ギアスの力は消えない。次の人生でもきっと、君はギアスに翻弄され、孤独になる。
でも、次の人生では君を、誰かが支えてくれるはずだから。
大丈夫。僕はね・・・・・・』




君の中で、生きつづけるよ。ずっと、一緒に。だから、安心して?




その言葉を聞きながら、ぼろぼろになった僕は、静かに目を閉じた。
U.U.の言葉がまるで、ゆりかごに乗っているように心地よかった。
最後に覚えてるのは、暖かいぬくもりが僕の中に流れ込んでくることだけだった。

「そしてあなたは、眠った。
記憶は全て消え、U.U.の力であなたの体は赤ん坊に戻った。
神根島で赤ん坊の姿のままで眠っていたあなたは、時代を超え、現代で目覚めた。
皮肉にも、ギアスと神根島の調査に来たブリタニアよって・・・。
・ルシフェル。お前の子供、ロイ・アストリアがあの後どうなったか聞きたいか?」

は黙ったままだった。
何も言わないを見て、C.C.が静かに話し出す。

「お前の子、ロイ・アストリアは、お前が眠ってからもすくすくと成長を続けた。
ロイはお前に似て、強くて優しい青年に成長した。
そんなロイを、子供のいない、とある小さな国の王が養子にと引き取った。
年老いたその王の代わりに、ロイはその国の王となった。
即位したロイは、ニーア・ド・ブリタニアと名乗るようになり、国は名前を変えた。
神聖ブリタニア帝国・・・・。そう、ロイは初代ブリタニア皇帝。
つまりお前は・・・・ブリタニア皇帝の祖先ということだ。」

静かに彼女の言葉を聞いてるを見て、「驚かないのか?」と声をかけるC.C.。
は笑って見せた。

「正直驚いてるよ。でも・・・ここまで来たら、なんでもアリだな。
死ねない体も、ブリタニア皇族の祖先だったことも。
全てを思い出してから、僕の中で、僕じゃないもう一人の鼓動が聞こえるような気がする。
きっとそれはU.U.。彼はずっと、僕と一緒に生きていた。
そして・・・・あの時彼と僕がひとつになったことで、僕はギアスのコード保持者になった。
ブリタニア皇帝と、同じ存在・・・・。」

「そうだとしても、お前は・ルシフェルだ。」

額縁の絵が飾られる空間に、アストリア皇帝だったころのの肖像画浮かび上がる。
その横には、ビデオ再生されているように、昔のの出来事が流れていく。
この空間に住まうC.C.が言うように、自分が過去の人間だったとしても、
今の彼自身は・アストリアではなく、・ルシフェル。
・アストリアの人生を捨て、・ルシフェルの人生を歩みだした人間・・・。

「そうだね。僕は間違いなく、・ルシフェルだ。
全てを思い出し、僕自身の罪も理解した。僕がどんな存在なのかも・・・。
ありがとう、C.C.。僕の記憶を呼び覚ましてくれて。」

「礼なら正しい時空のC.C.に言ってくれ。彼女は優しい。
それゆえにお前をここに送り、ルルーシュをもどこかへ送った。
きっと、ひと時でも何かから、彼を守ろうとしたんだと思う。」

「ルルーシュは・・・どこへ?」

はC.C.に尋ねる。彼女はゆっくり、遠くを指差した。
彼女の示す先に、空間の裂け目のようなものが小さく浮かんでいた。
「彼はおそらく、私の過去を見ている」とつぶやくC.C.に、は目を細める。

「君の過去は・・・・・」

「あまりいいものではないよ。私もコード保持者だ。それ相応の罪は背負ってる。」

C.C.はに背を向けた。も、彼女に背を向け、空間の裂け目へと歩いていく。
全てを思い出した自分を、は受け入れてくれるだろうか?
大丈夫だ。きっとは、全てを理解してくれる。だって僕たちは仲間で、兄弟なのだから。
それがたとえ、偽りのものでも・・・・。

空間の裂け目に手を入れる。光が見えた。
ここと同じような空間にたたずむもう一人のC.C.と、ルルーシュの姿も。
は思いっきり、空間の中に飛び込んだ。
「ルルーシュ!」と、彼の名前を呼びながら。
こちらを向いた彼はきっと、C.C.の過去を知った後だろう。
左目にギアスを宿したルルーシュも、が何かの答えを掴んだのだと、瞬時に分かった。
右目だけにギアスを宿していたはずのが、両目にギアスを宿していたから・・・・。






* * * *




「私を憎む人、優しくしてくれた人、全て時の流れに消えていった。
果てることのない、時の流れの中に・・・・。
あぁ、これで終わる。私の長い旅が・・・・・・。」

アーカーシャの剣の中で、C.C.がブリタニア皇帝に寄り添う。
彼女は、やっと自分の命が永遠という名の呪いから解き放たれるのだと実感していた。
いろんな人と出会い、別れ、そして時代を重ねていく。
もう、十分だ。十分生きた。あとは静かに眠りたい・・・。全てを、終わらせたい。
ゆっくりと目を閉じた瞬間、一人の少年の声が鋭く上がった。

「C.C.−−−−−−−−−−っ!!!!」

その声と同時に、蜃気楼とランスロット・クラブの姿が浮かび上がる。
この空間そのものが、直接思考に干渉するシステムだと気づいたとき、
何かのシステムが2機を身動きの取れない状態へと誘う。
羽交い絞めにされた蜃気楼とランスロット・クラブを見て、ブリタニア皇帝は笑った。

「すぐに終わる、ルルーシュよ。そこで見ておれ・・・。」

皇帝がC.C.の腕を掴んだ瞬間、2人を光が覆う。

「やめろ!そいつは俺の・・・・俺の・・・・。
答えろC.C.!なぜ俺と代替わりして、死のうとしなかった!?
俺に永遠の命という、地獄を押し付けることだってできたはずだ!?
俺を哀れんだのかC.C.!そんな顔で死ぬな!」


最期くらい、笑って死ね!

俺が必ず笑わせてやる!だから・・・・・・・・っ!


最後の言葉に、とC.C.が同時に目を細めた。
C.C.は皇帝を突き飛ばし、蜃気楼とランスロット・クラブを助ける。
「これ以上奪われてたまるか」とつぶやいたルルーシュが、アーカーシャの剣を攻撃する。
神殿は崩れ、皇帝はルルーシュを睨んだ。

「なんたる愚かしさかーーーーーーーーーっ!!!」

(愚かしいのは、あなたのほうだ・・・・。
ロイはきっと平和を願い、けがれのない国という意味をこめてこの国を神聖ブリタニアと名づけた。
あなたはそんな初代皇帝の願いを考えていない。
ねぇ、U.U.。この世界は、僕たちが生き続けるような価値のある世界じゃないよね?)

自分の胸に手を当てて、の操るランスロット・クラブはツインMVSを構える。
神殿の柱を切り倒すその姿に、ブリタニア皇帝が吼えた。

・ルシフェル!!!ワシを裏切るかーーーーーーー!」

爆発するアーカーシャの剣の中で、ルルーシュが落下していくC.C.を捕まえる。
そのままとルルーシュ、C.C.は元の場所へと戻ってきていた。
ギアスのマークが刻まれた扉の前で、C.C.が目覚める。
心配そうに彼女を見つめていたルルーシュとを見て、C.C.は言った。

「あっ・・・・新しい、ご主人様たちでしょうか!?
できるのは料理の下ごしらえ、掃除洗濯、裁縫、牛と羊の世話。
文字は少しなら読めます。数は20までなら・・・・。死体の片付けもやってたので・・・」

そんな彼女の姿にルルーシュは言葉を失い、を見る。
記憶を失ったC.C.に、はかつての自分の姿を重ねるのだった・・・・・。








生へ帰りたまえ!神聖な真剣さをたずさえて行きたまえ!
神聖な真剣さこそ生を永遠になすものなれば。
(ゲーテ)