*ヒロインがコードギアス連載「IC」主人公なのでご注意くださいませ。
たぶん、いろいろ捏造部分が………。











はやる気持ちを抑えて、ロロはこっそり足音を立てずに近づいた。
目の前で赤い髪の少女がイスに座り、何か書類とにらめっこしている。

(また姉さんは仕事してるんだ…………。)

そう思うロロ自身も、本国に待機する機情と連絡を取るために政庁へときていたのだが………。
最近思うように自分の姉や兄に会えないのは、ルルーシュと一緒にいるためである。
ルルーシュの監視の仕事につく前は、すぐに終わる仕事が主だった。
でも、とっても汚い仕事。必ず人を殺していた。それは仕事なので仕方ない。

の真後ろに立つと、ロロは上から彼女を見下ろした。
こんなに近づいても気付かないなんてと思いながら、無言での手元を後ろから見ていた。
難しそうな内容が書かれた書類が見える。
姉はいつもこんな書類相手に仕事をしているのかとロロは思った。
よく考えてみれば、自分の姉がどんな仕事をしているのか詳しく知らなかった。
ロロはしばらくぼうっとその姿を眺めていたが、小さく彼女に声をかけた。

「姉さん。」

ぴくりと体を反応させて、は振り返った。
さらりと長い髪が肩から落ちる。
振り返ったは、赤い瞳を大きく開いていたが、その瞳も次第に細くなる。
にっこりと笑って彼女は柔らかな唇を動かした。

「来てたの?ロロ。」

「うん、ちょっと政庁に用事があって。それよりも………大変そうだね。」

ロロは近くにあったイスをの横まで持ってきて、彼女の隣に座った。
姉に甘えるように体をぴったりとくっつけて擦り寄る。まるでネコみたいだと自分でも思う。
は少しはにかんで、「今日はやけに甘えん坊さんね。」と言った。
彼女は小さな手でロロの頭をなでたあと、再び書類に目を落とす。

「姉さんは、いつもこんな難しい書類とにらめっこしてるの?」

「そうね。仕方ないのよ。私は皇女だから、誰かがやらないと………ね。
少しでもシュナイゼルお兄様やお父様の負担を減らしたいし、私にできることってこんなことだから。」

「もう十分やってるよ、姉さんは!!!兄さんだって、姉さんは仕事のしすぎだって心配してたし。」

ぴったり体をくっつけたまま、姉の瞳を見つめるロロ。
体をに預けてるせいで、彼女を見上げる形となった。
見上げたの瞳はどこか悲しそうで、ロロは「どうしてそんな目をするの?」と疑問に思う。
彼女は一瞬ロロを見たあと、遠い目をして答えた。

「まだ………足りないのよ。」

ただその一言だけを呟いて、は再び書類へと目を落とす。

まだ、足りない。

その意味を、彼は理解して口をつぐんだ。8年前の出来事を、ロロは知っているから。
その罪がを苦しめて離さない。彼女を蝕んでいく。着実に。

ロロは視線を下に向けたまま、ゆっくりとの手を包み込む。
そうすると、彼女はぴたりと作業する手を止めて、驚いた表情で彼を見た。
「ロロ?」と彼の名前を呼ぶよりも早く、ロロは静かに呟く。

「僕が一緒にいてあげるよ、姉さん。僕も一緒に姉さんの罪を背負う。
だからね………そんな悲しい顔しないで。僕だって、兄さんみたいに姉さんのことぐらい守れるんだから。」

震える声で言葉を口にすると、姉は微笑んで「ありがとう。」と言った。
温かい手が、ロロの手を握り返してくる。
ロロはその手を放したくないと思った。いつまでも、姉さんとずっと一緒にいたい。
それはロロが、心の底から願ったこと。








弟の立場から