日曜日の朝、俺はスザクと決めた集合場所に来ていた。 目的は水族館の写真を撮ってくるため。 一体その写真を何に使うのか分からないが、「会長命令!!!」と言われたからには従うしかない。 腕時計を確かめた時、スザクが走ってくるのが見えた。その後ろに、見慣れない人物がいた。 「ごめんルルーシュ!!!」 「5分の遅刻だな。」 俺は少しだけ目を細めて彼を見る。 そのあとに、スザクの後ろに控える少女を見た。彼女はじっと俺を見つめている。 「あ、ルルーシュ、今日は彼女も一緒にいいかな? 僕が水族館に行くっていったら、彼女も一緒に行くってきかなくて……。」 「・です。 ブリタニア軍所属、X1型戦闘兵器、製造番号は……」 「、そういう挨拶の仕方はダメだって、この前ジノと言ったばっかりだろ? 人間はそんなふうに挨拶しない。ほら、ルルーシュがびっくりしてる……」 苦笑したスザクが、を見てギョっとしている俺に視線をうつした。 今、彼女はなんて言ったんだ?戦闘兵器?ブリタニアの? 俺の表情に気付いたも一言謝って、「よろしくお願いします」と呟く。 彼女のあとにスザクが言葉を付け足した。 「ルルーシュ、はね、ブリタニア軍が作ったサイボーグなんだ。 人間に見えるけど人間じゃない。だから今日、いろいろ迷惑かけると思うけど許して。」 苦笑したスザクに冷や汗を垂らした。 ブリタニア軍が作ったサイボーグ。つまりは黒の騎士団にとって大きな脅威となる存在。 とてもじゃないけどそうは見えなかった。 目の前にいるのは普通の少女と変わらない。アッシュフォード学園に通っててもおかしくない。 こんなの……計算外だ。まさかブリタニアがこんな恐ろしい機械仕掛けを開発しているなんて!!! そう思っている時、スザクの携帯が鳴った。 「ちょっとごめん」と言ったあと、スザクは携帯の通話ボタンを押して俺たちから少し離れていく。 「……、さんって言ったな。俺はルルーシュ・ランペルージだ。」 手を差し出す。彼女はそれを握る。柔らかい感触。けれどもひんやり冷たい。 「……でいい。あなたのことはスザクからよく聞いてる。」 すぐに手が放された。スザクはもう少しかかりそうで、俺はに話しかけた。 「、どうして急に水族館へ?」 「……生き物が見たくて。人間じゃない生き物は、どうやって生きているのか知りたくて。 生きるっていうことを、実感してみたいの。私はサイボーグだから、生きるってことがよく分からない……。」 「おかしなサイボーグだな。」 素直に口から出た言葉に、はちょっとだけ笑う。とても人間らしい表情だった。 「そう……だね。みんなからよく言われる。欠陥なんじゃないかって。 けどロイドはそう言うとちょっと喜ぶし、私を作ってくれた人も喜んだ。 私を作ってくれた人はいつも、『、人間だけじゃなくて生き物についてたくさん学びなさい』って言ってた。 だから学ぶ。人間だけじゃなくて、全ての生き物について。生きるってことについて。」 はそう言いながら太陽に手をかざす。 光に照らされた彼女が、輝くように見えた。 笑った顔は無垢な少女そのもので、どこにも穢れがなかった。 本当に戦闘兵器なのだろうかと思うほどに。 「でもは……戦闘兵器なんだろ?人を殺すんだろ?命令だからか?」 「……命令は絶対。」 「命令があれば簡単に人を殺すのか。 生きるということを学ぼうとしているお前が……。やっぱりお前は機械だな。」 「人を殺すのはいけないこと?いけないことなら、どうして人間は私を作ったの?」 の言葉に、俺は何も答えることができなかった。 視線をそらし、自分の手を見る。 人を殺すことがいけないことだとは、はっきり言えなかった。 ゼロになろうと決めた時、俺は兄を殺した。殺したあと、手が震えて怖くてしかたなかった。 スッと視線を上に上げると、が俺を見ている。 「、答えてほしい。人を殺す時、君はいつも何を思う?」 かすれるくらいの声で尋ねると、彼女の口はすぐに動いた。 「その人の幸せを。本で輪廻転生っていうものを学んだ。 だから私は、今度はその人が幸せに生きれるように……。」 が少しだけはにかんだ。その表情は日だまりのように暖かかった。 まるで、俺を光に導く太陽のようにどこまでも優しい。 彼女の頬に手を伸ばそうとした時、電話を終えたスザクが戻ってくる。 「ごめんね、二人とも。、ちゃんといい子で待ってた? ルルーシュを困らせるようなこと、してないよね?」 「そんなことしてない。私はルルーシュとのおしゃべりを楽しんでた。」 「そうなの?じゃ、今度は僕とおしゃべりを楽しもうね。」 にこりとスザクが笑って、俺の前でと手を絡める。 彼女は嫌がらず、そのままスザクにされるがままだった。 なぜか俺はチクリと心が傷んだ。彼女が遠くに行ってしまうような感覚。 あぁ、もしかして俺は……に惹かれ始めている? 計算外だ、本当に。どうして俺が、あんな機械に……。 近くでスザクとの声が聞こえた。 |