キミシニタモウコトナカレ


(与謝野晶子)





足立との最終決戦を迎えようとしている前夜、
は堂島が入院している病院にいた。
病室で二人は、堂島に明日最終決戦に臨むことを伝える。
彼はそれを黙って聞いていた。

「必ず、足立さんを生きたまま連れて帰ってきます。」

彼にはこれまでの罪を償ってもらわなければならない。
「………おう」という力のない返事。さっきから堂島は下を向いたままだった。
普段の彼ならの背中をバン!と叩き、「勝ってこいよ」と言うだろう。
堂島の様子の違いにはも驚いているようだった。に目配せする。
菜々子のこともあり、きっと疲れているんだろう……そうにそっと声をかける。
頷いたは、堂島に言った。

「それじゃ堂島さん、今日はこれで帰ります。
堂島さんもゆっくり休んでください。」

「…………。」

くるりと二人は彼に背を向けた。その瞬間、堂島の低い声が上がる。

「……おい、待て。」

二人は同時に振り返った。
堂島はじっと二人を見ていたが、ただ一言、若い彼らに言葉を送った。

「お前ら、死ぬんじゃねぇーぞ。絶対、生きて帰って来い。」

は顔を見合わせる。そして力強く頷いて返事をした。

「はい。絶対、生きてみんなで帰ってきます。堂島さん、行ってきます。」

その言葉を残し、二人は病室から出て行った。
堂島は「はぁ」とため息をつく。
若い彼らに任せることしかできない自分がはがゆい。
彼は拳をにぎって、もう一度小さく呟いた。

「本当に、生きて帰ってこいよな。」

堂島は、彼らが出て行った扉をじっと見続けていた………。