終業式が終わり、は学校の屋上にいた。
春らしいさわやかな風が吹き抜ける。
学校に植えられた桜はまだ、咲いていない。
けれども4月になれば、この学校は一面ピンクに染まるだろう。
一年前、が来たときと同じような景色が広がる………。

が来て、一年が立つんだね。」

春の木漏れ日の中、は屋上から見える稲羽市を見て呟いた。
あっと間の一年だった。春にが転校してきて、ペルソナの戦いが始まって。
時に傷ついて、仲間と喧嘩して、真実までたどり着いた。
そして………。

「俺が来て一年。そしてまた、俺は都会へ戻る。
一年っていう約束がなかったら、このまま稲羽市にいてもいいんだけどな……。」

の膝に頭を乗せた状態で笑った。
向こうに帰る前に、に膝枕をして欲しいと言った
恥ずかしながらも彼女は了解した。
の膝に頭を乗せたまま、ネコのようにの頬へ手を伸ばす。

「最初は田舎なんてめんどくさい……って思ってた。
でもさ、俺が稲羽に来たのは、ちゃんと理由があったんだな。
仲間と出会うため。真実を見つけるため。でもそれだけじゃない。
きっと、と出会うため、俺はここに来たんだ。」

に呼ばれたんだな、俺………。

そう呟けば、の綺麗な瞳がに向けられた。
瞳が潤んでいる。泣きそうな表情だ。瞳から涙がこぼれ落ちそうだ。

「私もきっと、を待ってたんだと思う。ここで………。
が都会へ帰っても、私会いにいくからね。電車に乗って………。」

………。俺もまた、お前に会いに行くから。
だから……もう泣くなよ。」

ついにポタポタと彼女の涙がに降り注いでくる。

は体を起こし、を見つめた。そのまま彼女を押し倒す。
今度はを見下ろし、を見上げる状態になった。

「お前の涙が降り注いでくるのはごめんだよ。悲しくなるからさ。
代わりに俺が、お前にいっぱいキスを落してやる。
もう、泣き止んでくれ。にはいつも、笑っていてほしいから………。」

は静かにの唇やおでこ、頬にキスを落した。
彼女の弱弱しい抵抗の言葉を聞きながら。
柔らかい日差しの中で、はお互いの絆の深さを再確認する。
この絆はきっと、この先ずっと続いていく。
春の木漏れ日の中で、二人は同じことを思っているのだった。







春の木漏れ日