「少し寝たらどうなんだ?
ただでさえ最近赤マント事件のせいで忙しいうえに、明日は学校だろう?
授業中の居眠りは許されんことだぞ?」

暗闇から声がして、ライドウはゆっくりそちらを向いた。
声の主はゴウト。黒い毛並みを持つ猫が、窓際に座るの前で立ち止まる。

「ゴウト………。」

美しい唇が、彼の名を呟いた。
ゴウトは鼻を鳴らしたあと、その場に座って言った。

「で、何をしている、そんな場所で。今何時だと思ってるんだ?」

「夜中の3時過ぎ………。」

が短くそう答えた。ゴウトはため息をつく。
その時、彼の唇が再び動いた。

「ゴウト、今日の月は綺麗だ。白くて優しい光を放ってる………。
まるで、みたい。彼女もこの月を、見てるのか………?」

………?ぁあ、この前のデビルサマナーか。」

ゴウトが思い出すように空を仰ぎ見た。
とは、この前知り合ったデビルサマナーのこと。
とゴウトが赤マント事件を捜査していた時、軍関係の事件をおっていた彼女と遭遇したのだ。

年はと同じくらいで、髪の長い可愛い子だったなと、ゴウトは思い出した。
礼儀もわきまえていて、デビルサマナーとしての力量も申し分ない。
また会ってみたい………。
ゴウトがそう思った時………。

「また、に会いたい………。」

微笑みながらが言った。
その顔は、いつもより和らいでいて、ゴウトは少し驚いた。
彼とは結構長く一緒にいるが、こんな顔をしたのを見たのは初めてのこと。

『まさかコイツ………。』

のことが、気になってるのか………?

少しおかしくなって、ゴウトは下をむいた。
窓から吹き込んでくる風が、優しく二人をなでる。
ゴウトはゆっくり立ち上がると、そっと彼に言った。

「ぁあ、そうだな。俺ももう一度会いたいと思う。お前にふさわしいかどうか、見るためにな。」

言葉と同時に、姿が暗闇に溶け込んでいく。

「………やっぱりゴウトにはかなわない。」

彼の言葉に、が小さく笑った。






今宵、月と共に君を愛す