月だけが燦然と輝く夜。
私は一人、アッシュフォード学園の生徒会室を訪れた。

月の光のおかげで電気をつけなくても、部屋の中は明るかった。
部屋に入り、机の上を撫でながら歩いていく。
とある一つの机で、私は足をぴったりと止めた。

スザクがいつも座っている机。
表面を撫でれば、傷だらけで、まるでスザクの手や胸のよう。
あぁ、また無茶をして、傷を作ってなければいいのに。

すとん、と私はその机とセットになっているイスに腰を下ろした。
傷だらけのスザクの机に上半身を倒せば、傷が私の頬に触れる。
鼻をこすり付ければ、スザクの香りがするようで、私はとっても嬉しかった。

「スザクに…………会いたいよ。」

こんな静かな夜は、どうしても不安になってしまう。
戦場に行った彼からは、最近電話もメールもこない。
こちらから電話をかけても通じないし、メールを送っても何の返事も来ない。

怖い…………。

あなたを失うことが。

どうか、そこから生きて帰ってきて。

傷だらけの机の上に、透明の涙が流れた。
窓から注ぐ白い光にぼんやりとその涙が照らされて、キラキラ光るように見えた。
私にとって、あなたの存在はこの涙のように輝いてるの。
あなたが無事に帰ってきてくれれば、私は他に何もいらない。

「好きだよ、スザク。ずっと…………。無事に帰ってきてね。」

そう呟く私は、『大丈夫。僕は必ず帰ってくるよ。愛してる、。』と、スザクの声を聞いたような気がした………。










僕はランスロットのコクピットに座ったまま、ぼんやりと空に浮かぶ月を見ていた。
白くて、綺麗で、降り注ぐ光はのように温かい。

彼女は今、何をしているのだろう。
僕のことを考えてくれてるのかな?
最近作戦が忙しくて、電話もメールもしていない。
不安にさせていないだろうか………。

それだけが、僕の一番の心配事で。
僕が体じゅうに傷を作るたび、が悲しそうな、辛そうな顔をする。
君にそんな顔をさせたくない………。
今も、君はそんな顔をしているのだろうか?

ゆっくりと息をはく。

僕はパイロットスーツの上から鎖骨あたりを触った。
以前、ここに赤い花があった。のつけた、の印。
もう綺麗に消えてるだろうけど………僕はここに触れるたびに、たまらなく君に会いたくなる。
会いたくて、会いたくて、どうにかなりそうなんだ。
君を抱きしめたくて、柔らかな髪に触れたくて、赤い唇に僕の唇を重ねたくて………。

もう少し待って欲しい。
必ず無事に帰るから。…………君のもとに。
作戦が終わったら、すぐに電話をかけるよ。
今まで話せなかった分、沢山君の声を聞くよ。毎晩毎晩電話をかけるから………。

不意に、の声が聞こえたような気がした。
『好きだよ、スザク。ずっと…………。無事に帰ってきてね。』………の優しい声。
僕はそっと微笑んで、君の顔を浮かべながら呟いた。

「大丈夫。僕は必ず帰ってくるよ。愛してる、。」







願いごと、一つだけ………。





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二人とも、だいぶ重症だと思う(苦笑)