*りせ救出前の話。 明後日の休みの日、お好み焼パーティーやろうよ! もちろん、君の家で! そんなことを突然言い出したのは、千枝だった。 彼女の提案に身を固くする男子メンバー。 彼らはあの地獄のカレーライスを忘れてはいない。そう、一人を除いては。 「あれ?先輩方どうしたんっすか?そんなに固くなって。お好み焼嫌いなんすか?」 完二の平和ぶりを見て、陽介が呟く。 お前はあの地獄を知らないから、そう呑気でいられるんだよと。 もウンウンとうなづく。 「ね!いいよね!君!菜々子ちゃんにも楽しんでもらいたいし!」 お前らはうちの菜々子を殺す気か!? 助けを求めるようにに視線を送る。彼女は困った顔を浮かべた。 「うーん。どうかなあ?堂島さんに聞いてみないと何とも言えないし。」 そのとたん、千枝の顔が光輝いた。 「それって、堂島さんがいいって言ったら、お好み焼パーティーできるってことだよね!?」 しまった、というような顔をする。 陽介とは絶望的な顔をした。 堂島の答えは分かり切っている。きっと彼は…………。 「ああ、別に構わないが? 俺は仕事でいないだろうし、ガスには十分注意してくれよな? まあ、とがいるんだったら問題ないか。」 その晩、たちが予想したような返事が堂島から返ってくる。 は心の中でや陽介に謝った。 ああ、明後日に地獄がやってくる……と、のそばにいた彼は青い顔をするのだった。 *** 日曜日。朝からいつものメンバーが集まっている。 エプロンをつけた千枝が意気込んで腕まくりをした。 「よっしゃ!美味しいお好み焼つっちゃるよ!」 「頼むから、食べられるものを作ってくれよな………。」 彼女たちに聞こえない程度の声で陽介が言う。 ちなみに、今日は料理が得意なのサポートはなしで!ということのなっている。 ますます不安で、陽介は胸の前で手を組んだ。 そんな彼を、は余裕の表情で見ていた。 「、大丈夫なのか?」 「うん。多分大丈夫だと思うよ。」 視線を向ければ、早速千枝や雪子が、お好み焼のタネを作ろうとしているところだった。 せっせと作っていく二人のお好み焼からは、焼いた瞬間からいい匂いがする。 最後に鰹節と青のりをのせ、お皿に盛り付ける。 菜々子が感嘆の声を上げた。 「美味しそう!いただきます!」 「あっ!ダメだ菜々子!最初に毒味を…!」 慌ててが彼女を止めるが、時すでに遅し。 菜々子はお好み焼を口に入れると固まった。そして叫ぶ。 「美味しい!」 「えっ!?マジかよ!?」 慌てて陽介もお好み焼を口にした。 柔らかい生地と、ソースとマヨネーズの均一さ。も驚く。 「ふっふふーん!まあ頑張ればこんなもんよ…って言いたいけど、 実は昨日、に作り方教えてもらって、雪子と特訓したの。」 「確かに最初は凄いものができたわ。」 雪子が苦笑しながら言う。 「そうだったのか。」 は箸で掴んでいるお好み焼を見た。 確かに少しだけ、が作ったような味がする。の横にいたが口を開く。 「だって、せっかくのお好み焼パーティーでしょ? みんなで美味しく楽しく食べたいじゃない。今度はみんなで作ろう!」 は笑った。陽介が彼女の言葉に賛同した。 「ああ。そうだな!せっかくだし、俺も焼いてみっか! おい完二!食ってばっかいねーで手伝え!」 「分かったっすよ先輩!あ、ちょっと!首根っこ掴まないで下さいよ!」 賑やかな声が堂島家に響いた。はのほうを見る。 「。俺たちも一緒に作ろう。愛の共同作業だ。」 は彼女に向かって手を差し出した。 恥ずかしそうにはその手を取ると、一言だけ呟いた。 「馬鹿…。」 彼女は少しだけ嬉しそうだった。 |