白い部屋にいた。

秒針が奏でる音に耳をすませる。

そして、一定に動く長針と短針がその時間を示した時………

『約束の時間だよ?』

声が聞こえた。まだ幼い少年が現れる。
同時に尋ねられる。

『そうだ。もし世界が終わるとしたら、キミが最後に会いたい人物は誰?』

それは………。

その瞬間、世界は闇に覆われた………。







がたん、という音では目を覚ました。

どうやらリビングで眠っていたらしい。
ここのところ、夜はタルタロスに行ってばっかりだった。
流石に二十生活は辛いものがある。

まだとろんとしている目をこすって、は周りをみた。
先程音を立てたのは、そばに座る順平だったようだ。

「悪ぃ、起こしちまったか、……」

「いや、ちょうど起きなきゃいけない時間だったから大丈夫だ。」

時計を見ると、ぴったり10時だった。
最近は勉強のほうもさっぱりだ。
勉強は好きではないが、学生という身分なので勉強しないわけにはいかない。
今日は体調もすぐれないので、タルタロスはやめとくか……。
そう思った矢先………。

「ちょうどよかった。全員揃ってるみたいだね。」

背後で聞きなれた声がした。
突然の訪問者・幾月の声だった。
本を読んでいた美鶴は、幾月の突然の訪問に驚いて声を上げる。

「理事長!!!!来てくださるんなら連絡ぐらい……。」

「はははは、すまないね。ここに来られるのはいつになるか分からなかったから、
連絡のしようがなかったんだよ。
実はね、キミたちに仲間が一人増えたんだよ。」

「………え?」

急すぎることでゆかりが眉をひそめた。
幾月が手招きをすると、後ろからそっと一人の少女が前へ出る。
月光館学園の制服を着ていた少女に、美鶴と真田は大きく目を開く。

まぎれもなく彼女だった。
昔、美鶴や真田たちと特別野外活動部として一緒に戦っていた彼女。
当時の彼女はまだ幼さが残っていたが、今二人の目の前にいる人物は大人びている。
だが、顔は忘れない。
かつての仲間だから……。

少女はゆるりと微笑み、

といいます。」

ゆっくりと頭を下げた。その動作に気品が溢れていて、みんなに釘付けとなる。
そして、美鶴や真田以外に彼女を知っている人物がここにも一人。

「………え、?」

だった。
彼の言葉に、順平やゆかりが一斉に振り向く。
の姿に気付いたは、嬉しそうに笑顔を作った。

「久しぶり、。幾月さんからがここにいるって聞いてちょっと驚いたよ。」

、お前もを知ってるのか?」

口を開いたのは美鶴だった。

「お前も……って、美鶴先輩もを知ってるんですか?
俺は、とは転校するまで高校が同じ学校だったんです。クラスも一緒でしたし。」

たんたんとは述べた。
「そうか……」という美鶴に、今度はゆかりが質問する。

「先輩はさんとはどういうつながりなんですか?」

美鶴のかわりに真田が答えた。
をじっと見つめながら。

は、昔俺達と一緒にシャドウと戦っていたんだ。
だが彼女も忙しい人でな。彼女は帝都のデビルサマナーでもあるんだ。
当時、彼女にデビルサマナーとしての仕事が来たんで、部活を抜けて帝都に行ったんだ。
まさかこっちに戻ってくるとはな……。」

「あの……先輩、デビルサマナーって?話が見えないんスけど……。」

順平が難しい顔をしてゆかりの横に立っていた。
ゆかりも険しい顔をしている。
そんな二人に幾月がフォローに入った。

デビルサマナーとは、悪魔使役者のことを指す。
悪魔を召喚し、使役する者。
そしてこの悪魔を使役し、悪魔から街を守る任についているのが葛葉ライドウと呼ばれる者たち。
帝都では現在、十六代目の葛葉ライドウが街を守っている。

少し前、帝都では悪魔がらみの騒ぎが起きた。
この事件を解決するため、十五代目・葛葉ライドウがに事件解決の補佐を要請したことにより、
彼女は部活を抜けたのだ。
その騒ぎももう、ウソのように収まった。

話をきいた順平とゆかりは、目を丸くしてを見る。
そんなことがあるのかと……。
実際、の腰にはベルトが巻かれており、
そこに何本かの管みたいなものがぶら下がっているのが分かった。
あの中に悪魔が眠っているんだ……ゆかりはゴクリとつばを飲んだ。

「まぁ、説明はこのくらいにしてそろそろ休もうか。君も疲れてるようだしね。」

ひととおり幾月は説明をし、ぽんとの肩に手を置いた。
それが合図になったのか、美鶴がふっと笑っていった。

「キミの部屋はそのままにしてある。ただ、少し事情が変わってな。
2階は今、男子が使っているんだ。それでもよければ引き続きあの部屋を使ってもらうが……。」

「えぇー!?男子と同じ階って……いいんですか先輩!?」

驚きの声を上げるゆかり。
そんな彼女に苦笑しつつ、はゆっくりと答えた。

「はい、かまいません美鶴さん。私もあの部屋のほうがしっくりきます。」

ついでにふわりとマシュマロみたいに微笑んだ。
順平が一瞬赤くなってつぶやく。「めちゃくちゃ可愛いじゃん」と。

かくして、は二階の自分の部屋へと行くことになった。
それはの隣の部屋だった。
そういえばここには絶対入るなと、桐条先輩や真田先輩に釘をさされたなとは思い出した。

「まさか、とまた会うなんてな……。」

ごろんとはベッドに横になると、静かに目を閉じた。
彼女がデビルサマナーであることは知っていた。
しかし同時にペルソナ使いでもあったなんて……。

ふと、先程の夢が再び蘇る。

約束の時間………一体何の?

一番最後に会いたい人物?

それは………、だった。

彼女にもう一回会いたかった。

どうしてか分からないけど……。






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