ナイト・オブ・ラウンズは用事がないかぎり、この部屋からあまり出ない。
ただ一人だけ、例外がいた。
ナイト・オブ・ナイトのは18歳で、父親的存在であるナイト・オブ・ワンから学校に通うことを強制されている。
強制…………というが、はむしろ学校に通いたくて仕方なかった。
ナイト・オブ・ナイトの仕事の合間に学校へ行き、順調に進級している。
彼女の通う学校は私立の学校で、音楽科が設置されている。
はそこの音楽科に籍をおいており、ヴァイオリンを専攻楽器としていた。


のやつ、学校でどーしてるかなぁ〜。」

不意にジノが口を開く。
""という言葉に反応し、スザクが読んでいた書類から顔をあげた。

はブリタニア軍と皇族の中ではアイドル的な存在で、みんなからのお気に入りである。
アーニャは彼女のことを『可愛い。』と言いながら、持っている携帯で写真を撮ってはブログにアップする。
ピンクの髪を持つユーフェミアは、を着飾って遊ぶことが大好きだった。
その姉のコーネリアは、に思いっきり甘えるし、シュナイゼルはことあるごとにの様子を見に来る。
柔らかな笑顔を携えて…………。
クロヴィスは芸術に優れているのヴァイオリンをよく聞きにきたり、絵のモデルを頼んだりしていた。
いってしまえば、みんなが大好きなのだ。

「どうしてるって………勉強してるでしょ。」

パサリと手に持っていた書類をテーブルの上に投げ捨てるスザク。
彼は密かに、に恋心を抱いていた。それは目の前にいるジノも同じ。
二人はいつも本人の知らないところで、彼女の取り合いをしていた。
今もかすかに挑戦的な目でお互いを見ている。
そんな時、誰かの携帯が鳴り響いた。

「……………ノネットだが?」

携帯の持ち主は、ナイト・オブ・ナインのノネットだった。
ストラップに埋まらないシンプルな携帯を耳にあて、怪訝な顔をしている。
ジノとスザクは一瞬彼女を見たが、個人的な電話だろうと思いすぐに視線をはずした。
しかし……………。

「……………熱?学校で?どのくらいあるんだ?………それはなかなか高熱だな。
あぁ、分かった。私が迎えに行くから、は安静にしとくんだぞ?
帰りに病院に寄るから。リーダーには私から言っておくよ。」

ピ…………と携帯のボタンを押すノネット。
その瞬間、何か痛いような視線を感じてあたりを見回す。
顔に血の気がないジノとスザクと、驚きを隠せていないアーニャの視線とぶつかった。
ノネットは苦笑した。

(そういえば…………コイツらがいたんだ……………。)

に対する彼らの異常なまでの執着度は知っている。
それは彼らだけでなく、自分のリーダーであるナイト・オブ・ワンにもいえること。
彼は本当にを溺愛していた。自分の娘ではないくせに………。
しかしそれはノネット自身にも言えること。自分もまた、を溺愛しているのだから。

「ノノノノノノネットォー!!!熱!?病院!?がっ!?」

「それで!?は無事なんですかっ!?」

…………。病原体、殺す。抹殺。消去。」

一人黒い人がいるような気がしたが、ノネットは気にせずにうっとうしそうな目をジノとスザクに向けた。
彼らの瞳はまるで、『自分も迎えに行きますっ!!!』的な光を放っていた。
残念だけど、こんなおいしい役をとられるわけにはいかない。
可愛いと二人っきりなんて、なかなかないことだ。

「安心しろ。私が今から彼女を迎えに行って、病院に連れて行く。
リーダーの携帯にかけたらしいが、あいにく留守電だったらしくてな。多分会議中かなんかだろう。」

「じゃあじゃあ俺も行くっ!!!いいだろノネット、俺とお前の仲なんだしさぁ。」

「僕も連れて行ってください!!!が心配で………。の荷物持ちとかしますっ!!!」

「私も……………行く。」

三人の男女に取り囲まれ、ノネットは頭を抱えてしまった。
車にこんな人数を乗せたら、今度はが乗れないだろう!!!と、そう叫んでしまいたかったが、
三人ともあまりにも真剣なのでとても言い出しにくい。

「いや…………そんな大人数で行かなくても私は困らない。………むしろ邪魔というか―――――――」

「それじゃノネット行くぞ!!!待ってろよ!!!」

ジノがやる気満々でノネットの腕を掴み走り出した。
スザクとアーニャもそれに続く。
そうして、ナイト・オブ・ラウンズ専用の部屋は誰一人としていなくなった。

その直後の話。
熱を出したは、帰りの車でスザクに膝枕をされ、
ジノに頭を撫でられ続け、更にアーニャの心配そうな目を向けられながらノネットの運転する車で帰る。
皇族たち―――――ユーフェミア、コーネリア、クロヴィス、シュナイゼルからは沢山のお見舞いの品が届き、
それらはアーニャによって携帯で写真がとられ後日、彼女のブログに載ったという。










She has a slight cold











「私、もう熱なんか出したくない…………。」

「まぁそういうなって。」

「君がまた熱を出したら、すぐに駆けつけるからね?」










back