「海へ行きたいと思わないか?」 突然ジノにそう言われ、は「海っ!?」と目を輝かせた。 今日は仕事が休みの日。学校も休みなのでどう過ごそうかと思っていたのだった。 が嬉しそうに頷くと、ジノは彼女の手をとって、一緒に車に乗り込んだ。 オープンカーの屋根をあけ、海沿いの道を走る車。 吹き込んでくる風を気持ちよさそうには受け、ジノにゆったりとした笑顔を向けた。 ちらりとジノはその笑顔を見る。 とても可愛くて、ジノは耳まで真っ赤になった。 普段ならラブなスザク、アーニャに邪魔されてなかなか二人っきりでいることができない。 さらにはシュナイゼルやユーフェミアまでラウンズの部屋に乗り込んでくるものだから、 いつもジノは一人で男泣きをするのだった。 シュナイゼルもユーフェミアも、目当てで部屋にやってくるのだから。 「ねえ、ジノ。ジノって海好きなの?」 突然にそう聞かれ、ジノは笑って答えた。 「ん、あぁ。好きといえば好きかな。そういうは? 随分と嬉しそうじゃねーか。」 隣に座る彼女に尋ね返す。 はまっすぐ前を見つめて、恥ずかしそうにする。 そんな彼女が愛しくて、ずっと見ていたいと思うけど、車の運転中なのでジノも前を向いた。 名残惜しそうに……………。 そうしているうちに、がゆっくりと話し出す。 「うん、海は大好きだよ!!!あの青く大きなところがすきなの。 友達は海なんて焼けるところ、乙女のお肌の大敵っていうんだけど、私はそうじゃない。 だってキラキラ光って綺麗でしょ?ふわっと香る磯の香りも大好き。」 「ふぅーん。そっか。はきっと、人間として生まれる前は人魚だったのかもな。」 運転しながらジノは答える。 が大変な思いをしないように、カーブでゆるやかにハンドルを切る。 ジノの言葉には言葉を返した。 「そのことをビスマルク様に話したら、頭を撫でてジノと同じことを言ってくれたわ。 小さい頃ね、ビスマルク様にたくさん海に連れて行ってもらったの!!!」 「………………え?」 しばらく沈黙が続くが、ジノの素っ頓狂な声で沈黙が破られた。 横を見れば嬉しそうにニコニコと笑う。 彼は前を向き、一人で悶々と考える。 ビスマルクっていったら、ただ一人しかいない、ナイト・オブ・ワンのビスマルク。 じろりと睨むと結構怖くて、威圧感のある男。 にとってビスマルクは父親的存在でもあるって聞くし、 ビスマルクもを実の娘みたいに扱うほどの溺愛ぶりを披露していると噂で聞く。 ジノは眉をひそめた。 「どうしたの?ジノ?私なんか変なことでも言った?」 「あ、いや…………全然?ただちょっと考えたことがあっただけで…………」 「そうなの?それにしても、海が近づいてきたね!!!すごく楽しみっ!!!」 きゃあきゃあとはしゃぐの横で、運転しながらジノは思うのだった。 (の恋人になるためには、あのオッサンまでも敵に回さなけりゃならないなんて!!!) の恋人になれる日は、かなり遠い。 |