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が振り返りを見ると、は陽介に何かを渡しているところだった。
彼にはが不思議な人物として映っていた。
突然テレビの中に現れるし、ペルソナのことも知っていた。
まるで…………一度ペルソナを使ったことがあるような感じだった。

っ!!!」

もう一度声をかけるとは慌てて走ってきた。
ごめんごめんと口にしながら。そういえばさっきからコロマルの姿が見えない。

、コロマルの姿が見えないんだけど………。」

「え?ああ。お店の中にいるとマズイかなって思って、先に帰ってもらったの。
あの子、頭いいからすぐに理解してくれたわ。さ、今日は何を作ろうかなぁ〜。」

が伸びをしながらエスカレーターに乗る。
も彼女に続いてエスカレーターに乗った。横顔をじっと見つめる。
もしかして、彼女もペルソナが使えるのだろうか………?
彼女のペルソナとは、一体どんなペルソナなのだろう?









「おにーちゃーん、急がないと学校遅れるよ?」

教科書とノート、それからが作ってくれたお弁当を鞄の中に入れ込む。
次の日の朝のこと。
今日は先に行くからと、先ほどがお弁当を持ってきてくれた。のために。
菜々子には可愛い水筒を渡していた。
下に降りると菜々子が玄関から出るところだった。

「お兄ちゃんも途中まで一緒に行く?」

傘を手にしたまま、菜々子がに尋ねる。
はこくんと一回だけ首をふった。
昨日も雨。そして今日も雨。この雨に、何か意味があるような気がしてならなかった。

玄関を出ると、「ワンワン」という元気な犬の鳴き声が聞こえてきた。
菜々子が笑って手を振る。
『湯木』と書かれた表札の家の門の前で、つながれていないコロマルがしっぽを振っていた。
『自分も一緒に学校へ行く』って言ってるような気がして、ついついは声を出してしまった。

「コロマル、お前は学校に来ちゃだめだぞ?」

「クゥーン…………。」

そう言うと、言葉の意味が分かったのか、もの凄くうなだれた。
雨に濡れながらトボトボと自分の小屋の中へ消えていく。
少し可愛そうになった。ずっとコロマルの小屋を見つめていると急に腕をひっぱられる。
犯人は菜々子。

「お兄ちゃん、急がないと遅刻しちゃうよ。」

「それはまずいな………。」

そのまま二人で学校への道を急いで歩いた。
が作ってくれたお弁当がひっくり返らないよう、かばんを持つ手を気にしながら。
菜々子も、が持ってきてくれた水筒を大事そうに持っていた。
心なしか少し嬉しそうに見えた。

菜々子と別れたあと、はすぐに陽介と出会う。
昨日のことで陽介とは少し仲良くなれた気がした。
彼と約束をする。
人をテレビに放り込んだ犯人を、絶対見つけようという約束。
その約束が、と陽介の絆を深めたような感覚がした。
マーガレットが言っていた『絆』とは、こういう感覚なのだろうかと考えていた時には、
もう学校に到着していた。









鞄の中でメールが着信した振動がする。
天城旅館の前で傘をさしたまま立つは携帯を取り出した。
何となく、朝から雪子のことが気になり、家を早く出て天城旅館に着てみた。
雪子は忙しそうに和服姿で働いているだけで、特に変わったところはない。

「私の気のせいだよね?」

一人苦笑して、手に持つ携帯を握り締めて学校へと足を向けた。
歩きながらメール画面を表示し、着信したばっかりのメールを見る。
差出人の名前を見て、は心臓が止まりそうになった。

「真田………真田先輩が?どうして?」

静かに雨が傘を打ち、パランパランという音が響く。
震える手でメールを開いてみた。
ただ単に、『元気か?』というメールならまだいい。
だけどは、メールを読む前から嫌な予感がしていた。その予感は当たってしまった。



From 真田先輩
Sub 稲羽市の事件のことだが。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
お前、今稲羽市にいるんだよな?
もしかしてそこで起こった事件とは、ペルソナが関係しているのか?
俺はずっと、急に何故お前がそっちに引っ越したのか考えていた。
事件はお前が引っ越してからすぐ起こっている。
お前は………何を感じ取ったんだ?
もう俺はペルソナが使えるわけじゃない。だけど……お前の助けにはなりたい。
2年前ようなことが起こっているのなら、俺も力になりたいんだ。
アイツが守ってくれた未来だからな。
よかったら返信待ってる。



メールを読み終えては、さすが真田先輩だと思った。
彼女は稲羽市に引っ越す理由を誰にも言わなかった。
2年前の仲間にはただ、『叔父と叔母のいる稲羽市に引っ越します』とだけしか言っていない。
あの青い部屋………ベルベットルームのことも、イゴールのことも言わなかった。

「どうしよう…………。」

真田に、全部話そうか。
新しくペルソナに目覚めた者たちのことを。
いなくなったはずのシャドウが、異次元にいたことを。
あの悪夢を、真田に突きつけてもいいだろうか?
は携帯を鞄にしまって、学校への道を歩く。

(もう少し、様子を見てみよう………。真田先輩に話すのは、もう少ししてからでもいいか。)










八十神高校の放課後。相変わらず、雨が降り続いていた。

「ねぇ、雪子見てない?」

慌てて教室に入ってきた千枝の声で、と陽介、の会話は止まった。
千枝の顔には血の気がなく、真っ青になっていた。

「え?今日はお休みじゃないの?」

は真っ青な顔の千枝にゆっくり問う。
ぶるぶると彼女は首を振って、「昼から来るって言ってたの。」と唇を動かした。
ハッとした陽介にの顔つきも変わった。

「まさか………あのテレビの中に?」

「ちょ…………何言ってんのよ花村。そんな怖いこと言わないで………よ。」

陽介とがテレビの中に入っていったのを見ていた千枝は、少しテレビに恐怖感があった。
実際何時間も帰ってこない花村たちだったので、彼女は本当に恐怖した。
テレビの中で死んじゃったのかもとか考えた瞬間、背筋に冷たいものが走り、涙があふれた。
人目を気にせず、ずっと泣いていた千枝の前に現れた陽介とは無事だった。
そして何故か二人と一緒にと一匹の犬がいたことにも驚きだった。

「携帯には電話をかけたのか?」

ふいににそういわれ、千枝は彼の顔を見る。
隣で心配そうにも千枝を見つめていた。
さっきは雪子につながらなかった。
に「手伝い中だったら、携帯に出られないのかも。」といわれ、旅館にかけてみることを思いつく。
すぐさま携帯を取り出して電話をかけると、出たのは雪子だった。
千枝は肩から力がぬけるのを感じる。

「よ、よかったぁ〜………。」

雪子と少し会話し、すぐに通話終了のボタンを押した。
そのままキッと陽介を睨みつけると、彼は慌てて千枝に弁解する。
そして、彼女に昨日の出来事を詳しく話した。
もそれに加わる。

「………ってことは、テレビの中で霧が晴れた日、つまりこっちでは霧が出る日に、
中にいる人は自分の影に殺されるってこと!?」

話を理解した千枝が目を丸くして驚いた。
三人は一斉に首を縦にふった。

「それで、花村の場合はその影がペルソナっていう戦える力に変わったわけなんだ。」

「まぁまぁ、俺の痛い話はいいからさ。
それよりも、今からテレビの中に確認しに行っとかね?やっぱ心配だしさ。
もちろんも来るだろ………?」

「へ?う、うん。いいよ………。」

あまり気乗りがしなかったけど、は行くことにした。
本当は少し雪子の様子を見に行きたかったけど、自分の気にしすぎだろうと思いとっさに返事をする。
ニカっと陽介は笑った。

「それじゃみんな一緒にジュネス行こうぜ!!!」

陽介の言葉が合図になって、みんなが鞄を手に取った。
一緒に階段をおり、陽介と並んで学校の玄関を出た時、陽介がこっそり耳元で囁いた。

、昨日は写真サンキューな。おかげで何か吹っ切れた。
俺、先輩のために絶対犯人捕まえるから、お前も協力してくれよな?」

そう言う陽介の顔はすがすがしくて、も嬉しそうに力強く頷いた。
遠くから、その光景をはじっと見ていた。
彼は何故だが心がムズっとする。
陽介と。二人の間にも、少し深い絆が出来てて…………なんだか面白くなかった。

(何でこんなに心がムズムズするんだろう………。)

それが嫉妬だったなんて、このときのには分からなかった。









#6 そこに生まれたものは絆だけではなく。