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幾千の星と深い闇の中で、輝く光がある。

彼が奇跡を起こした場所にはいた。

あの時見た、奇跡の瞬間。

彼が指を上げた時、彼女は叫ぶ。

「せんぱいっ!!!」

彼がこっちを見て言った。

「イ  ザ  ナ  ミ  …………。」








ピピピピピ……………

は掛け布団を蹴飛ばして跳ね起きた。
目覚まし時計が5時をさし、いつもの聞きなれた音を発している。
彼女はベッドの下に落ちた掛け布団を引っ張り上げ、ため息をついた。

最近この夢をよく見る。
心を落ち着かせようと目を閉じ、ゆっくり息を吐き出す。
時として、夢とペルソナはつながっていることがある。
彼が言った「イザナミ」という言葉。
何かつながりがあるのだろうか………?

ごそごそとは布団から這い出して伸びをした。









「ふぁ〜ぁ〜…………。」

2年の教室で、陽介は大きいあくびをする。
昨日はたっぷり寝たはずだった。
それなのに、体のだるさはいまだに抜けない。
ペルソナを使うということがどんなに大変なことなのか実感した。

「おはよう花村。」

「大きなあくびねぇ、花村君。」

ガタガタと音を立て、二人が荷物を置いてそれぞれの席に座った。
陽介は机に突っ伏したまま、じっと横に座るの整った横顔を見る。
まつげが長い。
唇も赤く、そこからもれる吐息が甘く感じる。
よく見れば日本美人というものだと陽介は思った。
派手じゃないけど純粋な色を思わせる少女。
都会にいた時、月光館学園の女子はレベルが高いと聞いたことを思い出した。

(ヤマトナデシコって感じだな、って。陰のファンがいそうだよなぁ〜。)

そう思いつつ、今度は前の席に座るを見る。
こちらもなかなかの美男子だ。
このルックスにクールな性格だから、もモテるだろうなぁと陽介はぼんやり考えた。



二人がくっつけば、美男美女カップルのできあがりだ。

「ん?どうした、花村。」

彼の視線に気付き、の手が止まる。

「あ、いや。別に……………。」

陽介はふっと視線をそらした。
そらしてみて、なぜ自分が視線をそらさねばならなかったのか考えた。
そらす必要なんかない。
ただ、二人がくっつけばお似合いだと考えながら見ていただけだ。
そのまま笑って、に言えばよかった。
ってお似合いだよな。」と。

だけど、それができない。

認めたくない。

の関係を。

もっとのそばにいたい………。

彼はその時ハッとした。
この前感じたイライラ感。
あれはをとられてしまいそうだったからなんじゃないかと。

(はは………まさかな。そんなわけない。だって俺とは出会ったばっかだぞ?)

自分の中にほのかに灯った光は、恋という名の光なんじゃないのか?
認めてしまうのがなぜだか怖かった…………。

「あの、おはよう。」

しばらくして、陽介のそばに影が落ちた。
おずおずとあいさつした人物を、、陽介、の3人が見る。
里中千枝。
昨日ペルソナを得た仲間の1人。
昨日と変わって顔色はよく、唇にも千枝らしい血色が戻っていた。

「おはよう千枝ちゃん。昨日はぐっすり眠れたでしょう?」

笑ってが言う。
少しいたずらっぽい口調に、千枝もはにかんだ。

「うん、すっごい疲れたから、かなり寝ちゃった。
おかげで今日の数学の宿題終わってないんだぁー………マジやばい。」

「よかったら見せようか?」

「ホントっ!?ありがとぉー君!!!」

ワイワイと騒ぐ3人。
ここで水を差すのもなと陽介は思い、
雪子のことやペルソナの話をすることを控えた。
すると突然、さっきまで騒いでた千枝がぴたりとおとなしくなる。
3人は目をぱちくりさせ、「どうした?」と声をかけた。

「ううん、あたし嬉しいの。だって昨日のもう1人のあたし、見たでしょう?
あれは全部あたしの本音。本音で生きてるあたし。
でもそんなあたしを見ても、みんないつもどおり接してくれる。
それがね、嬉しいの…………。」

千枝はこっそり涙をふいた。
そんな千枝の手を包み込んで、は言った。

「当たり前よ
本音を知ったからって、千枝ちゃんががらっと変わるわけじゃない。
本音なんて誰だって持ってるの。私だって………。
でも、思うことや考えることは自由だから。」

にぎられた手から、の温かい熱が伝わってくる。
やわらかくて、心地よい。
これが彼女の心の力なのかなと千枝は感じる。

ペルソナ。

のペルソナはとても温かかった。

さん………。
あのさ、あたしさんのこと『』って呼んでいいかな。」

ふいに千枝がそう問えば、は嬉しそうに「いいよ。」と答える。
それに便乗して、も小さく彼女の名前を口にした。

…………。」

「えっ…………?」

彼女は驚いてを見る。
その呼び方が、あまりにもあの人に似ていたから。

「あ、ごめん。」

「い、いいの!!!
君がいいと思うなら、名前で呼んでくれても。
ただ………昔リーダーだった人と呼び方が似てたから、
ちょっとびっくりしちゃって………。」

懐かしそうに目を細めるに、は少し寂しくなった。
彼女はいつも誰かを見ている。
誰かの影を追いかけている。
戻らない誰かを…………。

「そうか。それならも俺のことを名前で呼んでくれてもかまわない。」

誰を見ているか分からない瞳に向かって、彼は言葉を紡いだ。
の瞳がをとらえる。そして世界に戻ってきた。

「うん、じゃあ名前で呼ばせてもらうね。」

微笑んでは言った。
そんな2人の間に1人の人物が割り込む。

「あ、。俺のことも名前で呼んでくれても大丈夫だかんな。
その代わり俺だって名前で呼ぶし。」

花村陽介はいつもどおりの口調で述べる。
内心はドキドキしていた。
女子の名前なんて、呼び捨てで呼んだことがない。
呼んでもせいぜい苗字くらい。

「ええ、分かったわ陽介。ちょっと恥ずかしいね………。」

顔を少し赤くしてが言ったので、
陽介も赤くなりながら「そうだな。」と相づちをうった。
二人を見て、千枝は「お?」と思う。
雰囲気が付き合い出したカップルみたいな感じのものだったから。

(あれれ………?もしかして花村って……)

そのままニヤけて思う。
彼はもしかして、に淡い恋心を抱いているんじゃないかと。
その横で、は複雑な気分だった。
やっぱり陽介との間には、二人にしか見えない絆があるように思えて。
まだ自分との間には、何の絆もない。
その場でただ、焦りだけがを駆り立てていた。









#10 不安と焦り。