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月明かりが差し込む窓を見つめて、千枝は寝返りを打った。
時計を見れば夜中の三時。
早く寝ないと、今日の1限に響くことは分かっている。
けれども、眠れなかった。
昨日、テレビの中で起こった出来事と、彼女の話を聞いて………。

『世界が、人が、終末を願った』

から。

『人が、滅びを呼んだ』

から。

『私達は、絶対のものと戦った』

それはの言葉。二年前の1月31日、彼女は死と戦っていた。
15歳という、まだ大人でもない彼女が、ペルソナを使って……。

そして彼女はたどり着いた。命の答え。生と死。死の先に待つ、誕生。終わりと始まり。
彼女のチームリーダーだった少年は、宇宙の果てへと旅立った。
彼がどうして旅立ったのかを知ったのは、3月31日。
死に触れたいという人の欲望から、絶対のものを守るため。

『今ならまだ、引き返せるよ?
ペルソナに目覚めたあなたたちに、何が待っているかは分からない。
最悪、死ぬかもしれない。でも、今ならまだ、間に合う。
やめることだって………できる。ゆっくり考えて。』

は全てを話し終えてから、そう言葉を紡いだ。
千枝は枕に顔を押し付けて、じっくり考える。
本当は、怖い。戦ううちに、何度か危ない目にもあった。怪我だってした。
今なら引き返せるよなんて言われたら………。

君は多分、投げ出さないって言うと思う。責任感、強いし。
あいつ……花村はどうするのかな?花村って、本当は不器用みたいな感じだし。
聞いて……みようかな。」

そう思ったとき、近くで携帯が震える。一瞬ドキっとした。
花村から?それはない。千枝は携帯を手に取った。
メールではなく、電話。発信元は、天城雪子。慌てて千枝は電話に出る。

「雪子っ!?こんな時間にどうしたの?」

「あ、ううん。千枝、ごめんね。夜中に電話なんて………。
ちょっと、眠れなくて……。なんとなく、千枝も起きてるんじゃないかって思って。」

「雪子………。うん、あたしも寝られなくてね。
のあんな話聞いちゃうと、なんかいろいろ考えちゃってさ。」

起き上がった千枝は、ベッドの上で座った。
窓から差し込む月の光は柔らかい。
電話の向こうの雪子も、いろいろ考えているんだろうと、千枝は思った。
口を開きかけたところに、雪子が話し始めた。

「ねえ千枝。ちゃんって、やっぱりすごいよね。
中学三年生で、デスと戦ったんだから。私、ちゃんのこと、尊敬しちゃう。
私ね、ちゃん本当は、すごく苦しかったんじゃないのかって思うの。
だって、悲しいことがあったあと、またペルソナに目覚めたんだよ?
そんなちゃんの苦しみを、私は理解してあげたい。私はちゃんを……支えてあげたいと思う。」

雪子がキリっとした口調で言う。
それを聞いていて、千枝は雪子がどう答えを出したのか分かった。
彼女の声を聞いてると、千枝は自分のモヤモヤが消えていくような感覚になる。
自分の友達は、もう答えを出した。それならば、私はどうだろう……?
そんなのとっくの昔に決めてたことだ。共に戦う。事件を解決する。そのための、自称特別捜査隊。
何があっても……揺らがない。
にっこり笑って、千枝は小さく呟いた。

「そっか。それが雪子の答えなんだね。」

そういえば、電話の向こうで「あっ……」と小さく聞こえた。そのあとに、謝罪の言葉。

「ごめん千枝。こんな、千枝に私の思いをぶつけるみたいなことして……。」

「いいのいいの。だってあたしたち、友達でしょ?
それに、雪子の声聞いてたら、自分がしなきゃいけないことっていうのが見えてきたの。
そうだよね。私達、戦わなきゃ。あたしらの手で、事件を解決しようって決めたんだし。
はこれまで、そんなあたしたちを支えてくれた。なら今度は、あたしたちもを支えてあげなきゃ!
強くならなきゃいけないよね!昨日みたいなことにならないように………。」

「千枝………。うん、そうだね!」

力強い雪子の声が返って来る。
千枝と雪子は、そのまましばらく話を続けた。
きっともう、陽介やも答えを出しているはず。
電話を終えてから、千枝はメール画面を開いた。
もうすぐ明け方。もしかしたらはもう、起きているかもしれない。
堂島家のお母さんとして……。そう考えたら、自然と噴出してしまった。



To
Sub あたし、決めたよ
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
、まだ寝てたらごめんね。
あたし、決めたよ。どんなことがあっても、あたしは揺らがない。
みんなと一緒に戦う。昨日の話聞いて少し怖いと思ったけど、勇気出すね。
そしてもっと強くなる。を支えられるくらい。だからこれからもよろしく、



「送信………っと。」

千枝はメール送信完了の画面を見届けてから、再び布団の中にもぐった。
これで少しは眠れるかもしれない。そう思う頃には、夢の入り口へと立っていた。

一方、目覚ましを止めたは、携帯に手を伸ばす。
新着メールは4件。どれもこれも時間はバラバラだったが、彼女のよく知る人物たちから。
、陽介、雪子に千枝。
4つ全てに共通することは、「一緒に戦う」という言葉。
みんな自分の話を聞いて、怖いと思ったはずなのに………。
は携帯を握り、静かに呟いた。

「強さは力じゃない。強さは恐怖に立ち向かう勇気。みんなはすごく……強いよ。」

は差し込んできた朝日を見て、小さく笑った。









夕方。五月も終わりそうな時にふく風は、微妙に生ぬるかった。
そろそろ雨が降りそうな天気の中、ぞくぞくとジュネスに終結するペルソナ使いたち。
フードコートに集まったのは変わらぬメンバー。
昨日、から恐ろしい話を聞いたにも関わらず、誰一人として欠けていない。
最後に陽介が姿を現してから、は小さく言った。

「ありがとう、みんな………。」

彼女の言葉に千枝や雪子が笑う。陽介だって、グッと親指を立ててみせた。
がボソっとに言う。

「ここでやめるわけにはいかないからな。
それにイゴールに言われてるから。俺は真実を見つけなくちゃいけないってな……。」

「うん………。」

は真剣なまなざしで頷いてみせる。
彼女の役目は、を真実へと導くこと。
あの話を聞いてもペルソナと関わることをやめなかった
導かなければ………。彼を真実に……。
どんな真実が待っているのか、自分には分からないけれど……。

「よし、それじゃメンバーもそろったことだし、今日こそ完二を救出する!!!
みんな、今日はもしかしたら完二のシャドウと戦うことになるかもしれない。
覚悟しててくれ………!!!」

「わかってるって!!!よっしゃ、いくぜ相棒!!!」

「ちょっと花村。そういうアンタがいっちばん足引っ張るタイプなんだからね!!!」

「千枝………言い過ぎ……。」

「わんっ!!!」

それぞれが笑顔を見せたまま、家電売り場へと向かっていく。
も隣に立つを見て、笑った。
「行こう、。」と彼女の背中を押して歩き出す。
そんなの手は、じんわりと温かかった。涙が出てくるほどに……。

家電売り場に到着して、彼らはすぐにテレビの世界へ旅立った。
クマと合流し、サウナダンジョンの最上階へと向かう。
大きい扉の前でが息を整える。横でが、自分の持ってるペルソナカードを確認していた。
その中で一番美しいカード……オルフェウスのカードがチラリと視界に入る。
その瞬間、の頭にイゴールの言葉が蘇ってきた。

『彼女は先の戦いで、二つの命の答えにたどり着いたのです。
一つは宇宙の片隅で死んでいく命の輝き、もう一つは宇宙の片隅で生きていく命の輝き。
その二つの答えにたどり着けた時、彼女は世界の称号を与えられたのです。』

答えにたどり着き、世界の称号を持つ彼女。
そして、これから答えを探そうとしている自分。
これから先、己はと同じ領域に立てるのか……それはきっと、自分次第。
は大きく息を吸い込む。キリっとした眼差しで目の前の大扉を捕らえると、鋭く叫んだ。

「行くぞ、みんなっ!!!」

威勢のいい声が、背後で響き渡る。
バン!!!と勢いよく開かれた先に本物の完二と、黒い瘴気をまとったもう一人の完二がいた……。









#22 勇気は強さ