「なんか、不思議だよね。」

隣を歩くが突然口を開いた。
が不思議そうにを見ると、彼女はずっと続く桜並木を見ながら続きを言う。

「一年前はさ、とは同級生としてこの桜を眺めながら歩いた。でも今は………」

恋人同士になって、桜を眺めながら歩いてるね。

は笑う。もつられて微笑んだ。
一年なんて、ホントにあっという間だったな。
はこの一年を振り返った。この一年で、たくさんの大切なものができた。

大切な家族。
大切な仲間。
大切な……人。

はふと、足を止めて桜を眺めた。
去年よりも綺麗に見えるのは、
そんなふうに大切に思えるものをたくさん持っているからかななんて、彼は思う。

「きっと、この桜はびっくりしてるだろうね。
一年前の私たちは、こんなふうにくっついたりしなかったからさ。」

がぎゅっと、腕に絡み付いてくる。
ふわりと香った彼女の香り。
に視線を落として呟いた。

「それなら、桜にもっと見せつけてやるか。」

そっと重なる二人の唇。
お互いの唇が離れた時、ぶわっと風が吹く。
ピンクの桜の花は舞い上がり、二人は幻想的な世界に包まれる。

「今ので桜が嫉妬したかもよ?」

「大丈夫さ。こんなにも綺麗な桜だ。すぐにでも相手が見つかるよ。」

舞い上がる花びらを見ながら言う
彼の手は、の手としっかり繋がれている。

、私たち、幸せ者だね。」

「あぁ、そうだな。この幸せが風にのって、他の人にも届けばいいな。」

「ふふっ。桜の花びらと一緒に、幸せのおすそ分けだね。」

二人はしばらく、その幻想的な世界の中に立っているのだった。






幸せと桜の花