とある天気のいい日。

アッシュフォード学園の制服に身を包んだ一人の少年と一人の少女は、
ミレイに頼まれたおつかいを終わらせているところだった。

買うものはそこまで多くない。
学校で使う備品だとか、生徒会のみんなで食べるお菓子とか……。
は「生徒会の経費でお菓子ってどうかと思うんだけど。」などと苦笑した。
ミレイにとっては、そこはあまり気にしない点なのだろうが………。

それよりもスザクは内心このおつかいにドキドキしている。
話は数時間前………。




今回のおつかい。本当はスザクだけが行く予定だった。
そこまで買うものも多くないし、男のスザクが行けば荷物も軽々と持てる。
でもミレイはニヤリと笑って言った。

ちゃんと久しぶりのデートしてきなさいよ!!!」

これにはスザクも言葉を詰まらせた。
「え!?」とか「あ……」しか言わないスザクの背中を押して、生徒会室から追い出すミレイ。
部屋の外にはにっこりと笑ったが立っていた。
「ミレイ会長からおつかいを頼まれたんだけど、スザクと一緒に。」……そう呟く彼女にスザクは顔を赤面させた。
そして今に至る。




彼は立ち止まり、意を決してに話しかける。


、あの………さ、僕と………」

「スザク、私とデートしてくれる?」

スザクよりも早く、のほうが先に話を切り出した。

最近恋人のスザクは軍が忙しく、彼女とろくに話もしていない。
彼がだけを愛してくれているのは知っているが、どうしても不安になってしまう。
彼女は声を大にして、教室の窓から叫んでしまいたかった。

『枢木スザクは私のものなんです!!!』

世界に響きわたるように。

!!!えっ………と、僕も今それを言おうと………僕も、とデートしたい……な。」

言い終わると、スザクは耳まで真っ赤になる。
は彼の言葉を聞いて、荷物を持っていない手を優しく握った。
そのままゆっくり歩き出す。
ふいにおとずれた温かい感触にスザクは体を反応させる。

手をつなぐ。

恋人たちにとって当たり前の行為が、今更新鮮に感じられた。
そしてスザクは実感する。
自分がだいぶと離れて生活していたことに。
ずいぶん前、会えないことに何度も謝る彼に、は笑顔で言った。

「仕方ないよ。スザクは軍人だもん。」

笑って「仕方ない」と言う。「軍人だから。」と言う。
だけどの笑顔の裏には不安とか、哀しみが見え隠れしていたのに気付いていた。

スザクは自分の隣にいる小柄な少女をちらりと見た。
すらりとした鼻筋が見えて、「ああやっぱり綺麗だな。可愛いな。」と彼は思う。
彼女とつなぐ手に力をこめて、スザクは小さくつぶやいた。

「ねぇ。ずっと一緒にいようね。学校を卒業しても、おじいちゃんとおばあちゃんになっても、
ずっと一緒に。これからデートもたくさんしよう。
二人で一緒にいろんなところを見て回ろう。世界の綺麗なとこも、悲しいとこも、全部全部。」

彼女も手を握り返して言葉を紡いだ。

「うん。私もスザクとずっと一緒にいたいよ。
スザクといろんなところにも行きたいし、この世界の全ても見たい。
でね、いつか『枢木』になれるといいな………。」

は照れたように笑ってスザクを見た。

いつかこの世界に平和が訪れて、「枢木スザク」と「枢木」になれますように………。










彼と彼女の至福の時間


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