夜のジュネス八十稲羽店。 閉店間近ということもあって、2階の服売り場にはもうほとんど客はいなかった。 バイトで服の整理をしていた陽介は、ふと顔を上げた。 そばにはマネキンのコーディネートをし終えた恋人のがいる。 今日はめずらしく、二人して同じ売り場のバイトだった。 「もうすぐバイトも終わるな。 明日は学校も休みだし、晩飯でも食って帰ろうぜ。 その………たまにはと、二人っきりでラブラブしてーしよ。」 服をたたみながら陽介はに言った。 「ちょ、陽介ったら!でも、いいね。二人でごはん。」 顔を赤らめながら、は陽介のほうを向く。 同時に、「あ………」という何かに気付く声も上げた。 不思議に思った陽介は、の向いてるほうに視線を向けた。 そこにはいろいろな洋服を手にとり、真剣に悩む堂島遼太郎の姿があった。 「………堂島さんが服売り場に来るなんて、ものすごく珍しいよね。」 「だ、な………。子供服売り場ってことは、菜々子ちゃんへのプレゼントかな?」 二人はキョトンとしながら言葉を紡いだ。 二人の視線には気付かずに、集中して服を選んでいる堂島。 しばらくそんな彼を見ていたが、陽介はとあることに気付いた。 「………っていうかさ、堂島さんが選んでる服って……菜々子ちゃん用だよな、やっぱり。 なんていうかその………センスがすっげービミョー……な気がするんだけど、 そう思うのって俺だけ?」 彼の言葉に、も顔をひきつらせた。 今風の赤いヒラヒラいっぱいのプリーツスカートに、 リアルなライオンの顔がプリントされた長袖シャツを選んでいる堂島。 しかも………ド派手なショッキングピンク……。 なんというミスマッチ………。 けれども堂島はその二つを組み合わせて、何度もウンウン頷いている。 「ねぇ陽介。私すっごい菜々子ちゃんがかわいそうになってきたんだけど、 これはどうするべきなのかな? やっぱりここは………店員として、コーディネートを手伝ったほうがいいよね?」 「奇遇だな。俺もそう思ってたとこだ。さすがにあのコーディネートはないだろ? あんな服を着せられた菜々子ちゃんのことを思うと………! それに、あの服を着た菜々子ちゃんを見たウチの番長も、ヒステリックを起こしかねないしな。」 陽介とは顔を見合わせ、力強く一度頷く。 そのまま堂島がレジへと行く前に、その場を駆け出すのだった。 その後、二人のコーディネートも虚しく、 堂島が嬉しそうな顔で最初にコーディネートした品々を買って行ったのはまた別の話。 |