私のコトワリ、優しい世界を作ること。誰もが笑える世界。 自分で立って、自分で歩いて、自分で人生を決めるの。 私は壊れた世界を作り直すため、そのコトワリを開きたい。 そんな私に彼は賛同してくれた。悪魔である彼、。 だけどそれは人間だった時の名前。今の彼が教えてくれた名前は『』だった。 この世界でコトワリを築くにはマガツヒと呼ばれるものが必要。 他のコトワリを築こうとする氷川や勇、千晶はいろんなところからマガツヒを奪った。 も私にマガツヒを差し出そうとしたが、私はそれを止める。 「違うの、そんなマガツヒいらない。誰かから奪い取ったマガツヒなんていらないの。」 私は自分で見つけた数個のマガツヒをに見せて、笑顔で言う。 「私はこれで十分。私には神なんていらない。悪魔の力も………。 これは私が開くコトワリ。だから私は自分の力でやりたいの。 神が力をくれても、私は私の力でコトワリを開いて世界を作る。」 それでもは無言で私の手にマガツヒを握らせた。 そして、優しい表情で言う。 「これは俺自身が見つけたものだ。誰からも奪っていない。」と。 最初は受け取らなかった私だけど、真剣な彼に私は折れてしまい、マガツヒを受け取った。 やがて、私に賛同したこの世界の悪魔やマネカタたちが、と同じようにマガツヒを置いていく。 いつしかマガツヒは、他の秘密主たちが持つ量と同じくらいの量となった。 秘密主たちがカグツチへと誘われる頃、私もそこに続くオベリスクの下に立つ。 そこから見えるカグツチを、私は見上げた。 他の秘密主たちはもう、オベリスクを通り越し、カグツチ塔へとのぼっている。 私は震えるのを我慢してカグツチを見上げる。 これから私は世界を築くため、他の秘密主たちを倒しに行くのだ。 怖い…………。 以前にそう呟いたとき、「それは悪魔である俺の仕事だ。」と笑って言った。 本当はあなたにこんなこと、させたくない。でもそうしなければ、私は私の望む世界を築けない。 なんて世界は残酷なのだろう。 「ごめんね、。私がコトワリを開いたばっかりに、あなたに辛い思いをさせる………。」 そう言えば、は冷たい手で私の手を握ってくれる。 冷たい腕で、私を抱きしめてくれる。 冷たい唇を、私の唇へと重ねてくれる。 でもそれは、決して冷たくは感じなかった。 私はに勇気付けられ、オベリスクへと一歩踏み出す。 そう、私は一人じゃない。 が私を支えてくれて、私のうしろには、私に賛同してくれた沢山の仲間がついている。 新しい世界のために……………。 私は一人じゃないんだ……………。 みんなの集めてくれたマガツヒが、温かく光った気がした。 諸の声聞くに告ぐ―――――――― 我は未来世に於て 三界の滅びを見たり。 輪転の鼓、十方世界に其の音を演べれば 東の宮殿、光明をもって胎蔵に入る。 衆生は大悲にて、赤き霊となり、 諸魔は 此れを追うが如く出づ。 霊の蓮華に秘密主は立ち 理を示現す。 是れ即ち創世の法なり――――――――― (ミロク経典 第四章 二十四より) 私は霊の蓮華に立ち、世界を創世する。 は私の横で優しく微笑んでくれていた。 いつまでも、いつまでも……………。 |