彼の交友関係は、とってもとっても広いのです。
それは仕方ないと私も理解はしています。
はワイルドの力を持っていて、ペルソナの付け替えも可能だ。
さまざまなペルソナを生み出すためには、いろんなアルカナが必要で………。
だから交友関係を広く保つことも必然的で…………。

「だからって………何も海老原さんとデートに行かなくても……。」

私はの部屋のソファーに座って、ぽつりと呟いた。
隣に座っていたが私の顔を覗き見る。

「もしかして、この間のこと、怒ってる?」

覗き込んだから顔を背けた私を見て、の声が震える。
ううん、違う。怒ってない。怒ってないけど………。

「怒ってないよ。でもなんだか、すごく悲しくて。私はの彼女でしょ?
だからってを束縛したくない。
のこと信じてるから、海老原さんと出かけるって聞いたときは引き止めなかった。
でもみんながそのこと、『デート、デート』って騒ぐから……。」

じわりとにじみ出てくる涙。

「やだ……。私にこんな涙、見せたくないのに………止まらないよ。」

顔を背けながら、私は涙を拭いた。
でもそれは、拭いても拭いても止まらなかった。
横からの温かい手が伸びてくる。
顎をつかまれ、半ば無理矢理のほうを向かされる。
私はを直視できなくて、瞳を泳がせる。

「なあ、。それってさ………嫉妬?」

ズキンと胸が痛んだ。
別の女の子と過ごすを見て傷ついた。それに名前をつけるならば、『嫉妬』。
私が何も言えなくなると、は綺麗な顔で少し笑った。
そのまま私と唇を重ね、唇を離したあと舌なめずりする。

「嫉妬の味、ごちそうさま。すごいうまかった。
はいつもさ、俺がいろんな奴らと出かけると、笑顔で見送ってくれるだろ?
きっと嫉妬なんてしない女の子なんだろうなと思ってた。
でも………違ったんだな。ちょっとだけどさ、俺、の嫉妬……嬉しいよ?」

掴まれていた顎が解放される。
今度は両手を拘束され、気付けばソファーに横になっている。
私を見下ろすは私の腕をソファーに縫いつけたまま、今度は妖しく笑う。

の嫉妬の味、キスだけじゃ味わえない。だからさ、今度は体で味あわせて?」

返事も待たず、は私の首筋に顔をうずめる。
私は心の中でそっと呟いた。








嫉妬の味を味わって?