「ミレイかいちょ…………」

がちゃんと生徒会室のドアを開けると、
の目に見てはならないものが飛び込んできた。
枢木スザクがカレン・シュタットフェルトを押し倒している。
二人の顔はすごく近くにあり、まるで今からキスをしてしまいそうな瞬間。
は大きく目を見開いたあと、逃げるように部屋から去った。

「ちょっ………!!!待って!!!これは違うんだっ!!!」

スザクは走り去る背中に向かって叫んだ。
彼の下でカレンも「誤解よ!!!」と大きく声を上げる。

話は数分前のこと。
キャタツに乗って作業していたカレンが足を踏み外し、上から落ちてしまったのだ。
反射神経のいいスザクはとっさにカレンを抱きとめたが、
そのままもつれ合う形となり、今の状況に至る。
「ごめん。カレン。」などと呑気にしていなければ、
多分にこの姿を見せることはなかっただろうと、スザクは激しく後悔した。

「僕の誤解を解いてくる!!!」

慌ててスザクがそうカレンに言い残し部屋を出る。
軍人のスザクは、持ち前の足の速さでみるみるうちにと距離を縮める。
彼は屋上へと向かう階段の踊り場でを捕まえた。

腕を掴むとスザクは一気に彼女を抱き寄せる。
触れる頬は少し濡れていて、泣いてるのかな?なんて彼は思う。
スザクはが好きだった。
でも想いを伝えたことは一度もない。
同様に、もスザクが好きだった。
だから、先ほどの光景を見てかなりショックだった。
は勘違いをしている。スザクはカレンとそういう関係だったのだと。

「スザク、放して。私、カレンを裏切りたくない………。」

ぽつりとがスザクの腕の中で小さく呟く。
スザクはに分からないように困った顔をして笑った。

(やっぱり誤解してる………。)

そう思ったあと、スザクは口を開いた。

、誤解だよ。カレンとはなんでもないよ。
ただ、彼女がキャタツから落ちそうになって、それを助けただけなんだ。
そしたらがあのタイミングで部屋に入ってきて………。」

「嘘よ。」

スザクが弁解するけど、は体を震わせながら小さく叫んだ。
ギュッとスザクの胸のあたりの制服を強く掴んだまま。
彼はどうしようもなくなり、こんなのは卑怯なんだけど……と思いながら、
の顎を上に向けた。

「んふっ!!!」

突然のスザクのキスには目を大きく見開く。
優しいキスだった。
スザクの唇の味がにしみこんでいく。
すぐにスザクは唇をはなして、彼女に微笑む。

「ね、。嘘じゃないよ。だって僕はが好きだから。
ずっとを想ってたから。
好きな人とじゃなきゃ、自分からキスだってしないよ。」

彼女のゆらゆらと動く瞳を見て、スザクが優しく言った。
は顔を真っ赤にしながら下を向いて言葉を紡ぐ。

「そんな……だって………。でも私だって……私だって……」

スザクのことが、ずっと好きだったよ?

恥ずかしさのあまり、は目をつぶり、消え入りそうな声で言う。
スザクは嬉しそうに笑って耳元で囁いた。

「うん、知ってた。だっては、絶対俺を好きになるって信じてたから。」

それは彼女にとって、とても甘い言葉だった。










優しいキスと甘い言葉


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