スザクが生徒会室に入ると、そこにいるのはだけだった。
何かの曲をくちずさみながら、器用に折り紙を折っている。
机の上に広げられたのは、色とりどりの折り紙で折られた鶴ややっこさん、
紙風船など様々………。
スザクはとたんに嬉しくなった。
これらは全て、スザクがに教えたものだったから。

「さーさのはーさーらさらー♪」

よく聞いてみると、彼女が歌っているのは七夕の曲。
今日は7月7日。
ああそうか、今年もまた、七夕がやってきたのだなとスザクは理解した。

「軒端にゆーれーるー…………」

気がつくと、の声にあわせてスザクも歌っていた。
今まで折り紙に夢中だった彼女が目を丸くして、少し顔を赤らめて声を上げる。

「いつ来たの!?スザク!!!」

そんな彼女が可愛らしくて、ゆるりと頬を緩めてスザクは答えた。

「今だけど。それにしても………これ、一人で折ったの?」

「うん、そうだよ。スザクが教えてくれた折り紙が今マイブームなんだ。
そしたらルルーシュが『タナバタ』………?っていうのを教えてくれたの。」

にっこりとが笑って完成した鶴をスザクに見せる。
「綺麗に折れてるでしょ?」と嬉しそうに言葉を弾ませながら。
スザクはに近づき、ストンと横に座った。
体はに向けたまま。鶴が握られている彼女の手首を優しく掴む。

「………?どうしたの?スザク。」

握られている部分とスザクの顔を何度も見ながらは疑問符を頭に浮かべた。

「ルルーシュに七夕を教えてもらったんだ………。
じゃあ、七夕って、どういうものか知ってる?」

「うーんと、笹の葉に折り紙で折った鶴とかをいっぱいつけるんでしょ?」

それ以外は知らないと言い、そのあと小さくふるふるとは首を振った。
知らないのも当然だ。はブリタニア人で、七夕という文化はない。
スザクは目を細め、ぎゅっと手首を掴む手に力をこめる。
そのまま強く引き寄せ腕の中に収めると、すかさず彼女の唇を自分の唇でふさいだ。

「ん、んぅ!!!」

突然のことでは何も理解できずに、ただスザクの深い口付けを受け入れる。
苦しくなったところで唇がはなされ、
酸素を求めるようには口を開き、肩で息をする。

「ごめん。だけどどうしてもこうしたくて………。」

は涙目でスザクを軽く睨むけれども、あまり効果がなかった。
むしろしゅんとなった彼に毒気をぬかれて、ついついが許してしまう。
彼から訪れるキスのあとはいつもそう。今回も………。

「も、もう!!!誰かに見られたら恥ずかしいじゃないの!!!」

口調は怒っているけれど、本心ではない。
スザクがそっと、の頬に手を添えて言った。

「だって…………今日は七夕なんでしょ?
は七夕の伝説って知らないよね?教えてあげる。
昔々あるところに、織姫という天帝の娘がいました。
その娘はとても働き者で、機織(はたおり)が上手でした…………」

この織姫は、彦星という青年に恋をしていました。
彦星もまた、織姫と同じで働き者であり、同時に織姫を愛していました。
天帝は二人の仲を認め、二人ははれて夫婦となり、幸せに暮らしていました。
しかし、あまりにも夫婦生活が楽しくて、織姫は機織をしなくなり、
彦星ももまた、牛を追うことをしなくなります。
天帝は怒って、二人を天の川を隔てて引き離してしまいました。
その悲しさに織姫は毎日泣いて暮らします。
かわいそうになった天帝は、年に一度の7月7日の日だけ、会うことを許しました。

「7月7日になるとね、どこからかやってきたカササギが天の川に橋をかけてくれて、
二人はその橋をわたって会いに行き、お互いへの愛を確かめるんだ。」

ゆっくりとの頬がなでられる。
彼女はスザクの優しい眼差しを送る瞳をじっと見ていた。
翡翠色の綺麗な瞳………。

「君は僕にとっての織姫だよ。
だから今日は沢山君を愛したい。彦星が織姫にそうするように。
まぁ………織姫や彦星と違って、僕は毎日君と会って愛し合いたいんだけどね。
それにと1年も離れることなんて僕には無理だし………。」

いたずらっぽくスザクは笑った。
も「私だってスザクと1年も離れたくはないわ。」ときっぱり述べる。

「僕達、幸せ者だね。毎日言葉がかわせて、お互いの姿を瞳に映し、
手を伸ばせば、触れられるだけの距離にいる。」

「そうだね。きっと織姫と彦星がこんな私達を見たら文句言いそう。」

くすくすとが笑った。
そんな彼女を見て、スザクがふっ、と真顔になる。
の赤い唇を軽くなぞり言葉を発した。

「ねぇ、。好きだよ?」

ずっと君を見ていたい。

君だけの僕でありたい。

きらきら光る天の川を、二人でずっと見ていられる君と僕でありたい。

7月7日は織姫と彦星が愛の歌を奏でる日。

僕達はそれを二人で聴いていようね。ずっと、ずっと………。











七夕の伝説











↓オマケ




「………ってことで、いいよね?」


なにやら不敵に笑い、黒いオーラをにじませたスザクにはあとずさる。
声を震わせながら「な、何が?」と問えば、がっちりとスザクがを掴んで離さない。
助けを求める声を上げようとしても、彼の甘いキスで力が抜けてしまった。

「ちょスザク!!!人がきたらどうするのよ!?」

「大丈夫。鍵もちゃんと閉めたし。」

「で、でもっ!!!」

顔を真っ赤にしながらは俯く。
彼女の顔を下から覗き込むようにして、
スザクは子犬のつぶらな瞳で彼女を見つめて「ダメ?」と囁いた。

「うっ…………」

言葉につまったを見たあと、スザクは笑って瞼にキスして言った。

が声をおさえれば誰か来てもバレないかもね。」

「!!!!」

そんなの絶対無理!!!と思うを、スザクはにこやかに見ながら小さく呟いた。

「それじゃ織姫様、いただきまーす。」












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最後で何させようとしてんだ私は………(汗)
裏は無理だ。