ペルソナを得て、訳の分からないまま一度学校へと戻ってくる。 御影総合病院でペルソナを使ってから、どうも体がだるい。 食堂で食事をしたあと、各自別れて休むこととなった。 俺はしばらく食堂でぼっとしていたが、なんとなく外の空気が吸いたくなり、屋上へと来ていた。 キィ………とドアを開けると、暗がりの中にうっすらと現れる人影。 毛布にくるまって屋上で寝ているその生徒に、最初俺は眉をひそめた。 (こんなとこで一人で寝るなんて……。相当の変わり者だな。) その生徒に静かに近づいた。 顔をのぞき込むと、月明かりで誰なのかが分かった。 「………?」 「………ん。」 少女は少しだけ声を上げたが、起きる気配はなかった。 毛布にくるまる彼女は、同じクラスの。 そして今日、御影総合病院にいたうちの一人。彼女も偶然、園村のお見舞いに来てた。 病室で会ってから、ここに帰ってくるまでずっと一緒に行動していたうちの一人だった。 そして………もまた、ペルソナ使い。 のペルソナはみんなと少し違っていて、強く、美しかった。 俺は眠るの隣に腰をおろした。 月を見上げると、いつもと変わらない月。昨日までは普通の日だった。 今日の朝も。2限目から登校して、3限目はここでさぼって……。 放課後に体育祭の準備をして、上杉から教えられたペルソナ様ってやつをやって……。 そこからが変化した部分。 しばらく月を見ていると、ぽつりと呟き声が聞こえた。 「お母さん………。」 「……?」 呼びかけてもは起きなかった。 代わりに毛布をぎゅっと握って顔を歪める。 閉じた瞳から、一筋雫がこぼれ落ちる。 涙………。 「、泣いてるのか?」 顔をのぞきこむ。不安そうな顔をしていた。 しきりに「行かないで。」と囁いている。 そうだ。には確か、母親がいないんだった。母親だけでなく、父親も………。 固く毛布を握る手を包み込むと、すがるように俺の手を握ってきた。 暖かかった。とっても………。 「いか、ないで……。」 「、俺はどこにも行かないよ?お前のそばにいるから……。」 そう言いながら、の白い肌に触れ、流れた涙をすくってやる。 片手を頬に滑らせ、そのあと頭を撫でると、の表情は和らいだ。 歪められた顔にはいつしか笑顔が浮かんでいる。 その顔がなんだか可愛くて、俺はつい見とれてしまった。 自然と心臓が高鳴る。耳まで熱かった。 白い肌がやけに目につく。 本当はずっと、気になっていたんだ。 窓際の席で、ぼうっと外を眺める。 図書室で読書をするのそばにいたくて、わざと本を借りに行ったりもした。 そのまま指を、優しく唇へと滑らせる。 俺はそっと、彼女の唇に自分の唇を重ねた。 「、ずっと前から好きだった。でも、話かけるタイミングがなくて……。 これからは俺がを守るよ。一人にしない……なんて、卑怯だよな。 寝てるに一方的に告白するなんて……。」 の髪を撫でながら、小さく俺は笑った。 今の告白を見ていたのは丸い月だけ。 いつか、ちゃんとお前に伝えるから……。俺の想い……。 少しだけ彼女が小さく笑ったのは、俺の気のせいかもしれない。 |