血塗られた事件があったその日。

ユーフェミアが死に、そして昨日まで僕の腕の中にあったぬくもりも、今日消え去った。



僕は一生のうち、彼女しか愛することを知らない。
彼女しか愛したくない。

にぎりしめる拳の中には、にあげたはずの指輪があった。
今日という日に、は僕から無理矢理引き離された。
ゼロという卑怯な男に…………。
ゼロは僕の目の前で、を連れて行った。

彼はに触れる資格なんてないんだ。

その手は人を殺した手。
そんな穢れた手で、白いままのに触れるな。
人を殺せと命じた口で、神聖にも近い彼女の名前を囁くな。

僕はぎりっと唇をかむ。
憎しみという黒い悪魔にとりつかれた僕を見ているのは、空に浮かぶ白い月だけ。
その月の光が、彼女のように優しく僕を包んでくれている。

そう、絶対渡すものか。

お前になんか、は渡せない。

を取り返すためなら、僕は何だってするよ。

ゼロを殺してでも君を取り返す。

そう思ったら、何だか心が軽くなって、笑いがこみ上げてきた。
最初、小さい笑いだったのが、だんだんと口の端から声がもれて完全な笑いとなる。

「あははは…………。」

そうだよ、ゼロを殺せばいい。
そうすればもう、僕とを引き離す奴なんかいないんだ。

「待っててよゼロ………」

小さく呟く。そして次に…………

「僕はゼロを殺して、キミを迎えに行くんだ―――――――――っ!!!」

月にむかって叫ぶ。
空気が震えるほど大きく…………。

愛してる、。だから僕は今からゼロを

殺し  に  行く  よ  ?
















月に吠ゆるもの