の部屋で、テオドアはベッドに座ったまま沈黙している。
がそっと、テオドアの横に座ると彼に振動が伝わった。
テオドアは顔を上げ、息と言葉を吐き出す。

様、ここに私を連れてきてくれてありがとうございます。」

笑ったテオドアの顔を、にこにこしながらが覗き込むと、彼の頬は林檎のように赤くなった。
内心テオドアはズルイと思った。
住む世界が違うから……と、自分は彼女を想う気持ちを封印しようとしているのに……。
それなのに、あなたはこんなにも、自分の前で無邪気に笑う。

「テオ、ゆっくりしていってね。何にもないけど……」

そう言って、がペロリと舌を出した。
いつもはペルソナ全書を握る手が、拳を握った。
言わなければ……。もうこれで、最後だと。
次に彼女と会う時は、ただのエレベーターボーイとお客人。
彼女と特別な関係になってしまうのは、テオドアにとって罪である。

様、私はもう、十分満足しました。
あなたがどんなところで生きているのかを知れて、私はあなたを深く感じることができたのです。
あなたはこんなにも、素晴らしい世界で生きている………。」

「テオ………?」

あぁ、あなたの瞳が私を映している。
テオドアはそれだけで嬉しくなり、優しく微笑んだ。
彼の言う意味を理解したのか、はくしゃりと表情を変えてテオドアに抱きついた。

「テオ……そんなお別れみたいなこと言わないで。最後なんて言わないでよ。
私、テオが好きだよ。テオと離れるなんて……嫌よ!!!」

ギュッとはテオドアの首に腕を回して泣いた。
テオドアが唇を噛んで聞いているなんて、は知らない。
しばらくテオドアは黙っていたが、そっとの背中に腕を回した。
壊れ物を扱うように、優しく……。

「依頼という理由をこじつけてあなたと会うなんて、私もずいぶんズルイですね。
けど様、あなたのほうがもっともっとズルイですよ。
あなたは分かっていらっしゃるはずだ。私は様と共に、この世界を生きることはできない。
想いを口にしてしまえば、あなたを苦しめるだけだと思っていました。
様を好きになることさえ罪だというのに、あなたはまだ、私に罪を背負わせる気なのですか?」

を抱く力は、だんだん強くなっていく。

「テオ…………。」

は体をテオドアに預ける。

「あなたは本当にいけない人……。私に罪を背負わせた人。
けど、いいでしょう。私はもう、ここまできてしまった。
辛い思いをするくらいなら、私はさらに罪を背負い、罰を受けることにします。
、あなたは私が好きなのだと、思ってしまってもいいですか?」

すぐにコクンという返事が返ってくる。
テオドアはにっこり笑った。
「では、容赦しませんよ。」などと優しく言ったあと、手にはめていた手袋を歯で噛み、脱ぎ捨てる。
の顔を覗き込むと、彼女は笑いながら泣いていた。
じかに触れる彼女の頬は、とても暖かくて柔らかい。
もう、あとには引き返せない。
テオドアは知っている。
ワイルドの力を得た者が、この先どんな運命を辿るのか……。
悲しくなるのは自分。辛くなるのは自分。テオドアに命の終わりなどない。
別の世界で永遠に生き続ける。いつか彼女と……と別れを告げる日がやってくる。
けど、それでもいいのだ。
大事なのは彼女と過ごした光輝くような時間。愛し合った時間。
それが一瞬の出来事でも、記憶として残るのなら……それでもいい。
そう教えてくれたのは、だから……。

「私はあなたを愛していますよ、。」

テオドアは穏やかにそう告げて、初めての唇に自分の唇を重ねた。









罪を背負った男