僕、枢木スザクは勉強が苦手である。
したがって、僕はいつも軍の仕事のない日は図書館で勉強しています。
アッシュフォードの図書館には参考書とか困らないほどおいているから。
図書館だから静かだし、勉強するには最高の場所だって言えるんだ。
でもこの場所は時として、勉強する場所ではなく、眠気を誘う場所ともなる。
ほら、今だってこうして…………。

僕はカクンとなった瞬間、目を開いた。
最初に目があったのは広げていた数学の教科書で………。
今日の数学の授業は全く分からなかった。それは僕が昨日予習をちゃんとしなかったせい。
もっと言い訳すると、昨日の夜、ロイドさんに付き合ってランスロットのデータをとったから。
夜遅くまで、ずっと。そのせいで自分の部屋に帰ってきたのは明け方だった。
寝たのはたった1時間くらい。そのせいで、今凄く眠い。

眠気を吹き飛ばそうと、計算をしてみるものの、逆に僕の眠気を誘ってしまう数字が憎たらしい。
頭が正常に働かず、一体僕は何の為に計算しているのか分からなくなった。

その前にここはどこだろう?ああ、もう眠くてたまらない。少し寝てしまおう………。

ついに僕は睡魔に負けてしまった。










学校の図書館が閉まるのは午後7時。
この時間になると学生たちは席を立つ。
図書委員として残っている生徒は戸締りや最終点検をするために、カウンターからゆっくりと立ち上がる。
今週の係りであるも例外ではなかった。

読みかけていた本にしおりを挟み、イスから立ち上がった。
今読んでいる本は、同じクラスのルルーシュ・ランペルージが貸してくれたもの。
「面白かった」と言って本を持ってくる彼の笑顔は普段見ないもので、
いつも冷たそうな彼はこんな顔もするのかとは思ったことがある。

よく読書をするとルルーシュが初めて出会ったのは、この図書館だった。
以来二人はよく、互いの本を貸し借りしているし、特別仲がよくなった。
だけど、がこの場所で出会うのは決してルルーシュだけではない。
そう。今日と言う日、はもう一人の人物と出会ってしまった。

戸締りをし、本の整理を行うの視界に入ってきたのは、机の上でうつぶせる茶色い頭。
かなり深く寝ているのか、閉館の時に流れる音楽にも起きない。
もう図書館も閉めなければならないしと彼女は思い、深く眠る人物のそばまで行く。

顔をその人物に近づけると、綺麗な顔で瞳を閉じる少年だった。
はなんとなく恥ずかしくなり、すぐに顔をどける。
と、机の上に広げられた今日習ったばかりの数学の問題が目に入る。
丁寧な字でノートに数式が書かれているが、途中で計算間違いをしていた。
よって、その先に続く問題は解かれてはいない。はじっとノートを見つめ、間違いを発見した。

「ここが間違ってたのね。どうりで解けないはずだわ。」

うん。と一人で彼女が呟いた瞬間、のそりと机でうつぶせになっていた人物の頭が持ち上がる。
は少しだけびくっと驚く。ノートを素早く机の上において、早口で言った。

「すいません、もう図書館閉めますのでお帰りいただけますか?」

ゆっくりと眠そうな目がをとらえる。
彼女は「あれ?」と思った。どこかで見たことがある。
翡翠の瞳、茶色いふわふわした髪。彼は確か、同じクラスの枢木スザクではなかったか?
そう考えているうちに、寝ぼけ眼のスザクが苦笑した。

「あ、ごめんなさい。僕いつの間にか寝ちゃってたみたいですね。すぐ片付けます。」

そういいながら、手際よく机の上を片付けていく。
は「ええ、すごくよく眠ってたみたいです。」と言葉をかけ、くるりと背を向けた。
本の整理がまだ終わっていない。
早くしないとルルーシュに怒られてしまう。今日は帰りがけにルルーシュオススメの本屋に行くはずなのだから。
は怒った顔のルルーシュを想像しながら手早く本の整理を始めた。









(あの子、だよね………。)

鞄の中に教科書をしまう手を止めて、本の整理をする少女の横顔を僕は見つめていた。
揺れるこげ茶色の髪は少しウェーブかかっている。
しばらく彼女を見つめてから、僕はその子の名前を心の中で反芻した。

同じクラスの

最近ルルーシュとよく話しているのを見るし、とても仲がよさそうだった。
リヴァルは彼女のことを、「地味で目立たないけど美人の部類に入る」と言っていた。
その日、彼女を知った瞬間、僕は彼女のこと以外考えられなくなった。こういうの、一目ぼれっていうんだっけ?
とにかく僕は、彼女を知った日から図書館に通うようになっていた。だけど僕が行く日はいつも彼女の当番じゃない。
縁がないのかななんて、一人しょげていたけれど、今日だけは僕に神様がついていてくれたみたいだ。

でも、なんて声をかけようか。
さっきはとてもいいタイミングだったのに、僕は寝ぼけていてチャンスを逃してしまった。
僕は馬鹿だ。どうしようもない馬鹿だ。
そんなこと言ってたって、チャンスは生まれないって分かっているのに。
どうしようもなく僕はただ、彼女を見つめるばかり。
すると、彼女は本の整理をしたまま僕に話しかけてきてくれた。

「あの………同じクラスの枢木君だよね?」

「う、うん!!!そうだよ。」

突然話しかけられ、僕は少し声をうわずらせた。
彼女は本を整理する手をふと止めて、僕に瞳をうつす。その瞳がとても綺麗に見えたのは僕の気のせいじゃない。

「あの………ごめんね、さっき勝手にノート見ちゃったんだ。
あのね、計算間違いしてたみたいだよ。Xは8じゃなくて3にならなくちゃだめなの。」

「あ、そうだったんだ。だから僕、その先の問題が解けなかったんだね。」

こくりとが頷いた。
その仕草が小動物みたいに可愛くて、自然に頬が緩む。
は僕から視線をずらして恥ずかしそうに小さく呟いた。

「あの………もし迷惑じゃなかったら、今度から勉強教えてあげるけど。
だって枢木君って、軍のお仕事と授業掛け持ちしてるでしょ?この前も学校休んでたし………。」

それは僕にとって、願ってもないチャンスだった。
なんて浅ましい考えだろうと自分で思うが、こんなチャンスを逃すわけにはいかない。
僕はすぐさまに返事をした。

「まさか!!!迷惑だなんてそんな。とっても嬉しいよ。
ルルーシュは生徒会で忙しそうだったから、頼みづらかったんだ。有難う、!!!」

最高の笑顔を彼女に向けて。
「あ………名前……」とが呟いたあとに、彼女もつられ、僕に笑って言う。

「ううん。スザク君の役に立つのなら、私も嬉しい。」

僕の名前を呼ぶ彼女の声は、とっても心地いいものだった。









黒の皇子 VS 白の騎士


(point of view: WHITE KNIGHT)




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